【新】桜木建二×東大総長「知識集約型社会」への転換が起きている

2019/6/13
桜木建二 おう、「ドラゴン桜」の桜木建二だ。 
東大なんて簡単だ! つべこべ言わず東大へ行け!
低学力だった龍山高校の立て直しを始めた直後から、俺がそう言い続けてきたのは、みんな知っているな?
桜木建二(さくらぎ・けんじ)/弁護士
ベストセラーマンガ「ドラゴン桜」「ドラゴン桜2」(三田紀房/作)の主人公。弁護士として、落ちこぼれ高校・私立龍山高等学校の運営改革を請け負い、東大合格者を多数輩出。それから10年、「ドラゴン桜2」では再び学力が低下した同校に戻り、教え子・水野直美と改革を断行。2020年の教育改革を前に、ITを駆使した最新の勉強法を提案する。Vtuberとしても教育論を展開中。「ドラゴン桜チャンネル」
どうせ社会で生きていくなら、ルールをつくる側に回れ。自分で歩く道くらい自分で切り開け。それが「東大へ行け!」の真意であるのは、大人の読者ならわかるだろう。
東大へ行けとはつまり、世を渡るのにいちばん有利な「知」を武器にせよということだ。かてて加えて、「知」を得る過程は、人生の喜びにも直結する。
それはそうだ、学ぶことほど愉(たの)しいものは、この世にふたつとないからな。
しかも、だ。俺の教えである「東大へ行け!」は、これからの時代、ますます重要になっていくぞ。20世紀まではモノや物量が、それこそモノを言った。
が、21世紀になったいま、時代を動かすのは情報であり、その集積たるデータになった。体系立てられた有用な情報やデータのことを、「知」と呼ぶのだ。
じゃあ、世の中で知が集約されている場所はどこか。大学だ。なかでも、最も良質な知の集積点はどこかといえば、昔も今も東京大学に決まっている。
東大の成り立ちから考えても、それは当然のこと。明治時代の人たちが、「知」によって治められる新しい社会をつくろうとしたとき、その核となるべくつくられたのが東大なんだ。
(写真:wnmkm/iStock)
まあ、歴史的経緯は追って話すとして、現在に目を向けるとしよう。どうやら東大は時代に先んじて、みずからの価値を高めようとしているぞ。
この連載では、受験にかぎらず広く「学び」を読み解いていくつもりなんだが、「知」の現状と行く末を見定めるために、学びの最高峰たる東大が指し示している方向を、まずはしっかり押さえておこうと思う。
最新にしてたしかな、価値ある情報を得るには、当事者に話を聞くのが何よりだ。変化を知るために、東大本部のある本郷キャンパスへ足を運び、人に会ってきたぞ。
そう、俺はただ好き勝手なことを偉そうにぶってるわけじゃない、緻密な取材を日々重ねているんだ。
東大のことを教えてもらうなら、この人しかいないだろう。
五神真・東京大学総長だ。
率直に言って、面会してすぐ、まだ言葉をほとんど交わしていない時点ですでに心を打たれた。何に感銘を受けたのかといえば、五神総長のたたずまいだ。
ひとことで言えば、「品」だな。微笑をたたえて柔らかい物腰ながら、まなざしはまっすぐ。相手を、というか世界を肯定している雰囲気が、周りを深いところで安心させるのだ。
大学という場で学びや知を探究し続けてきた結果としてこの「品」を持てたというのなら、それだけでも「知」を武器にして生きていくことが、目指すに足るものだという証明になるな。
五神真 今日は明るい未来の話をしに来ました。
五神真(ごのかみ・まこと)/東京大学総長
1957年東京都生まれ。1980年東京大学理学部物理学科卒業。理学博士(東京大学)。光量子物理学を専攻。東京大学大学院理学系研究科物理学専攻教授、東京大学大学院理学系研究科長・理学部長などを経て、2015年から第30代東京大学総長。日本学術会議会員、未来投資会議議員、中央教育審議会委員、科学技術・学術審議会委員、産業構造審議会委員、知的財産戦略本部本部員、一般社団法人国立大学協会理事(顧問)などを務める。
桜木 五神総長がそう切り出す。