[ロンドン 6日 ロイター] - フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)<FCHA.MI>と仏ルノー<RENA.PA>の統合撤回は、大手投資銀行ゴールドマン・サックス<GS.N>の現役社員と元社員の間で築かれた強力なネットワークによってフランス政府の支持を取り付けるという試みが、失敗に終わったという一面があった。

FCAの主取引金融機関は、前最高経営責任者(CEO)の故セルジオ・マルキオンネ氏に食い込んでいたUBS<UBSG.S>だったが、ルノーとの統合計画に関してはゴールドマンがUBSを押しのけて主幹事を獲得した。

一方、ルノーのアドバイザーは、ニューヨークを拠点とする企業合併・買収(M&A)助言専門投資銀行アルディア・パートナーズで、2016年に設立したのはゴールドマン出身のクリス・コール氏だった。コール氏はゴールドマンに30年間在籍し、投資銀行部門の共同会長も務めている。

統合交渉に関与したある関係者は「この案件は互いにずっと前から気心が知れている友人間で練り上げられた。しかしそうした関係性や豊富な銀行業の経験にもかかわらず、うまくいかなかった」と述べた。

コール氏はルノーのために統合交渉に直接加わった一方、FCA側はゴールドマンのフランソワ・ザビエル・ド・マルマン投資銀行部門会長がその相手役になった。

この2人は、やはりゴールドマン出身でフランスのM&A助言専門投資銀行ダンジェランのローラン・クラレンバッハ氏と緊密に連携して話を進めていた。ダンジェランは、創設者のブノワ・ダンジェラン氏がマクロン仏大統領と親しい関係にあるため、FCAが招き入れた。

こうした布陣を敷いた両社のアドバイザー陣営は、交渉成功に自信満々だった。複数の関係者によると、これら「ゴールドマン人脈」の効果で、統合案が公になる前にフランス政府の支持を得られるとの期待が出ていたという。

ところが今回は、フランス政府が新会社の経営に対するより強い発言権を求めた上に、ルノーと連合を組む日産自動車<7201.T>の抵抗もあって、ゴールドマン関係者の力さえ及ばなかった。

1人目の関係者は「案件の複雑性をうまく処理できなかった。また日産を蚊帳の外に置いた作戦も裏目に出た」と指摘した。

フランスのルメール経済・財務相は、交渉を進める主な条件の1つとして日産の支持を挙げたものの、FCAとアドバイザーは日産からの支持を取り付けるための根回しをせず、リークを避けようとして日産に情報を流さなかったのだ。

日産に近い筋は「最初から準備不足だった。FCAのアドバイザーは日産をのけ者にして、数日間でフランス政府の承認を得られると思っていた」と語った。

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