「ビジョン」と「能力」。CxOに必要な要素はどちらか

2019/6/10
前編
CxOと事業部長の違いは「3つのキーワード」で説明できる
NewsPicksアカデミアでは7月より徳谷智史氏が担当するゼミ「次世代CxOへのキャリアルート」を開講いたします。

Personal Mission

続けてCAP理論(CxOが備えるべき共通の要素・用件)の3つ目に当たるPです。
会社によってこのPを重視する度合いが大きく異なりますが、伸び続けるスタートアップベンチャーは非常に重視している傾向にあります。
PとはPersonal Mission、つまりCxO自身が個人として、何を実現したくてその会社にいるのかということです。個人と企業のビジョンやバリューの適合性・親和性とも言えます。
例えば、我々が支援するNewsPicks社、ユーザベース社は、この考えを極めて重視されています。なぜなら、会社として大事にする価値観を体現する存在こそがCxOであってほしいからです。
この度合いは会社によって異なるものの、個人と企業間の適合性・親和性が低いと、特定の能力・スキルは高くてもCxOとして十分機能しないことが多くあります。理想は、会社が大事にする、ミッションと個人が大事にするビジョンが重なっていることです。
CxO自身もそれを認識していて、自分と会社が何を実現したくて、だからこそ自分がいるとわかっている。そうでなければ、先ほどのCxOとしての説明責任も、借りてきた表面上の言葉になってしまい、十分な説得力が持てなくなってしまいます。
個人と企業間で価値観などにズレが生じていると、CxOとして対峙すべき苦しいシーンを乗り越えることができず、「自分には合わない」という理由を掲げ、会社を出て行くというケースが生じてしまいます。
だからこそ、自分がまず何をしたいのか、個人の価値観・ビジョン・将来の実現したいことを、どれだけ自分で持っているかが重要になります。最初はおぼろげなところから始まるケースも多いですが、様々なCxOと話すほどに、最終的には非常に重要だと思わされます。
ちなみに多くのCEOに「CxOに対して一番求めることは何ですか」という質問をしたことがあります。
最も共通で多かった解は何でしょうか。多くのCEOが、マインドや専門能力、スキルが高いということではなく「自分たちが目指すビジョン・ミッション・バリューにどこまで本気で共感できるか」を重視すると回答しています。
能力が高いからCxOとして自社に来て欲しいということだけではなく、企業の考え方に本当に共感できる人だからこそ入社してもらうという基準を持つことが必要です。
そうでなければ、Acquireにおける人を集めてくるときも、「私たちはこういう世界を目指しているから来てほしい」と本心で語れないはずです。企業のビジョン・ミッション・バリューと一致するPersonal Missionを自分のなかにしっかり持っているかどうか。それこそがCxOに求められる要素になります。
ちなみに、CxOのなかでも、Personal Missionを一番強く持っているのはやはりCEOになります。また、創業者はPersonal Missionだけで成り立っている場合もあります。
多少能力が不足していても、Personal Missionが極めて強いと多くの人が助けてくれ、結果的に組織として成り立っていくこともあります。
徳谷智史/エッグフォワード株式会社 代表取締役社長
企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、人の可能性を最大化するべく、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。UZABASE、NewsPicks経営陣へのコーチングやコンサルティング支援をはじめ、戦略コンサル、総合商社、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・トレーニングを幅広く手がける。同時に、キャリアの専門家として2万人を超えるビジネスパーソンの意思決定・成長支援を実施。

キャリアイメージ