【マネー教育】ワクワクしながらお金を学べ!

2019/6/16
新たに就任した「U-30 」のプロピッカーが、"数字"をキーワードに捉える「令和の日本」。それぞれの専門分野について、若きエキスパートが考える現状や課題とは?
小学校で周りの人に対するサービスを考えるという実践的な授業を受けた仁禮彩香さん。この経験によってお金に対する感覚が育まれ、中学生で起業することを自然に選択できたと言います。しかし大多数の日本人はお金について学ぶ機会がないまま社会に出ていかなければなりません。そんな現状を変えるために仁禮さんが作り出したプロジェクトとは?
お金を知らない子どもたち
日本はG7の中で2番目にファイナンシャルリテラシーが低い国です。世界ランクは38位と、子どもの頃からお金について学ぶ機会のあるヨーロッパ諸国などからは大きく差をつけられていて、海外の教育関係者からは「日本は学校でお金について学べない先進国」というイメージを持たれています。
例えばイギリスでは、小学校低学年から高校生まで金融経済の授業が必須科目となっていて、お金との関わり方を継続的に学べる仕組みが構築されています。一方日本では、7割以上の学校で、中学1年生に対し金融経済の授業は一切行われていません。
また、中高6年間のなかで金融経済の授業が最も多く行われている高校1年生の時点でも、「全く実施されない」もしくは「1〜5時間程度しか実施されていない」学校がほとんどです。
こうした状況に対して、「お金(金融経済)に関する授業時間が不十分」と感じている教員は、中学校では54.2%、高等学校で68.5%にも上り(下グラフ参照)、現場でも危機意識が高まっていることがわかります。
お金の学習は机上の空論?
実はこの68.5%という数字には、そもそも学校で金融経済に関する授業が一切実施されていないと回答した3割弱の教員は含まれていません。厳密に考えると、金融教育の欠如に対して課題感を持つ先生方は、さらに高い割合で存在するはずです。
教育の内容にも不安はあります。現在行われている金融経済教育の学習内容について、「問題がない」と回答した先生は中高全体で5%程度。半数以上が「用語・制度の解説が中心となってしまい、実生活とのつながりを感じにくい」、4割以上が「知識は身に付くが、能力や態度が身に付きにくい」と、お金と生活実感との乖離(かいり)を指摘しています。
お金の授業が起業のきっかけに
私が通っていた小学校には「キッズビズ」という授業がありました。1〜6年生の児童がチームを組み、実際に学校関係者や保護者、地域の人向けのサービスなどを考えるプログラムです。
その影響もあり、中学生のときに起業するという選択肢は私の中では自然なことでした。学校での体験のおかげでお金に対する基本的な感覚が育まれた状態で事業を始めることができましたし、ビジネスの場における自分の特性を認識していたために適切なチーム作りができたことは、今に至るまで、私の大きな支えとなっています。
小学生のときの筆者
資本主義社会に生きる限り、ほとんどの人が何らかの形でお金に関わることになるのは事実です。それにもかかわらず、現在の状況では、社会の仕組みについての学びや、社会やお金に対する自分なりの考えを持てないまま学校を卒業し、社会に出ていかなければなりません。そのような現状を、多くの教員と同じように、私自身も不自然であると感じています。
学生のうちにお金についての認識を高められれば、その後どんな仕事や活動をするにしても、より主体的・建設的に、納得感を持って取り組むことができるはずなのです。
生きる力を育むコンテンツ
本来であれば、金融経済教育を含め、現代社会を生きるために不可欠な力を育む教育は授業時間内に行うべきです。しかし現在のテスト対策型教育計画の中で、その時間を十分に確保するのは困難です。
そこで、私が代表を務める株式会社TimeLeap(旧Hand-C)では、放課後や土日に、小中高生を対象とした自己認識と社会接続をテーマにした教育コンテンツを提供しています。その中の“サタデースクール”には小5〜高3のスクール生が参加。毎週登場するさまざまなジャンルのプロフェッショナルから、社会の仕組みや、その方が世の中にどんなバリューを発信しているのかを学ぶことができます。
例えばお金の仕組みをテーマとした回では、トップランナーの起業家と子どもたちが、ビジネスモデルやお金、仕事に対する考え方をディスカッション。一緒に架空のお店をコンサルしながら、コスト削減とクオリティ確保のバランスを体験するなど、用語を覚える学習ではなく、子ども自身がお金との関係性を体感できる内容になっています。
さらに今年9月からは、小中高生に向けて「実際にお金を生み出してみる」プログラムをスタートさせます。子どもたちが、社会から反応を得ることのできるスモールビジネスを実際にやってみながら、お金や社会の仕組みを実践的に理解することや、自分の能力特性や興味関心を発見することができるコンテンツです。
学校で金融経済に関する授業時間が確保できていない大きな理由として、主に次の3つが考えられます(前述の調査「授業時間不足の要因」より)。
(1)にあるように、学校で金融経済教育をやりきる余裕がない現状においては、私たち含め民間が代わりにその役割を担うことも一つのソリューションだと考えています。ただし、アナログコンテンツはリーチできる人数が大変限られてしまうので、プログラムをデジタル化し、学生や子どもたちがより参加しやすいものにしたいと考えています。
マネー教育の重要性が社会的に認められ、(3)が理由で授業ができない状況が改善されるよう、私たちは今後も「お金の学習」に関する情報発信と提案に取り組んでいきます。