【過剰在庫】54兆円の削減に挑む、物流スタートアップの挑戦

2019/6/13
新たに就任した「U-30 」のプロピッカーが、"数字"をキーワードに捉える「令和の日本」。それぞれの専門分野について、若きエキスパートが考える現状や課題とは?
商業の足かせともいえる「過剰在庫」。それが解消されれば、あらゆるビジネスはより大きく成長するはずだと、株式会社ニューレボの長浜佑樹さんは確信しています。フェーズ1としてリリースしたソフトウエアによるビッグデータの取得。それを活用してフェーズ2、そして未来へ。物流スタートアップとしての取り組みを紹介します。
巨大市場の裏側に
日本国内の商業販売額(卸売り・小売りの合計年間販売額)は455兆9540億円と、世界的に見てもかなり大きなものです(参照:経済産業省「商業動態統計年報」より平成29年の商業販売額)。
しかし、その金額に比例した大きな社会問題があります。それが「過剰在庫」です。国内の流通市場における過剰在庫は約54兆円と推計され(経済産業省「平成29年小売業販売を振り返る」のデータから独自に算出)、それらは二次流通(いわゆる中古品販売)に流されるか破棄されています。
「需給ギャップ」が喫緊の課題に
過剰在庫を抱える企業のダメージは深刻です。過剰在庫は会社のキャッシュフローを圧迫し、資金繰りの悪化を招くからです。最悪の場合、過剰在庫による倒産も考えられます。「需要予測」さえできれば過剰在庫を抱えることはありません。
しかし流通の現場に立つと、その当たり前のことを不可能にするさまざまな原因が見えてきます。その一例として、在庫を把握できないことによる過発注、リードタイム(商品の発注から納品に至るまでの生産や輸送にかかる時間)を考慮しすぎたことによるオーバーストック、担当者の勘や経験に頼った発注、競合の進出などによるマーケットの変化などが挙げられます。近年、SDGsのゴールの一つとして「持続可能な消費と生産パターンの確保」が重要視されています。その中で日本も供給過多の現状を正面から見据え、需給ギャップの正常化に着手しなければなりません。
AIが適正在庫を予測する
私たちニューレボは「AIによる需要予測」というアプローチによって、この大きな社会課題の解決に取り組もうとしています。
その内容は、AIが過去の販売傾向から需要を予測し、適正在庫量を算出するというものです。「そんなことは膨大な販売データをもつAmazonや楽天 、Yahoo!ショッピングに 任せればよい」という意見もありますが、そうではありません。
ネット販売大手を含め 、小売りと卸のあらゆるデータを掌握できる立場にあるのが「物流」です。物流市場には、販売チャネルによるバイアスがかかっていないビッグデータが眠っています。それを活用し、私たちは需要予測を行おうとしているのです。
需給予測を実現するための鍵を握るのが「バーコード」です。単なる数字の羅列であるバーコードですが、それがひとたび商品情報にひも付けば、ある商品をどの企業がどれだけ扱っているか、それが北海道と沖縄でどのくらい売れているかが一目瞭然となります。商業のインフラともいうべきバーコードを活用することで、物流市場におけるデータ収集は確実に加速するのです。
Photo:iStock/metamorworks
在庫の換金をサポート
近年、欧米では新しい企業評価の手法として、在庫などの「動産担保」が注目され始めています。IT化により、販売ビッグデータを活用できるようになったためです。
ただし、実際に動産担保によって融資を行うには、動産の価値を算定する「在庫評価」が高いハードルとなります。日本でも在庫評価を行う企業はありますが、そのためには評価担当者が現場に赴き、在庫の棚卸しを行って在庫額を算定しなければならないため、時間がかかります。
そこで今後、私たちは在庫データだけでなく商品の市場価値も勘案して「在庫評価」を行います。評価担当者の仕事をITとビッグデータ活用によって代行するのです。この評価を元に、事業者は金融機関と交渉し融資を受けられる。これが在庫を換金するための新たなスキームです。
在庫を「非在庫」にする仕組み
事業者は過剰在庫を処分するために、大幅な値下げをします。それでも余った商品は二次流通に回すか破棄するしかありません。アパレル業界では二次流通の仕組みが確立されつつありますが、ほかの業界ではまだその仕組みができていません。
そこで私たちは在庫売買のプラットフォームを整備し、在庫を流動化させたいと考えています。これは本来、EC事業者向きのビジネスかもしれません。彼らは商品マスタ(商品名や商品画像などの商品情報を作成すること)をそろえる作業に慣れているからです。しかし私たちは在庫データと商品データのビッグデータを活用し、商品マスタを整備するつもりです。このようにして在庫の流動性が高まれば、過剰在庫問題の出口が見えてきます。
ビッグデータを入手せよ!
私たちは事業のフェーズ1として、在庫・販売・商品の3つのビッグデータ収集に取り組んでいます。その実現を可能にしたのが在庫管理ソフト「ロジクラ」です。
これまで物流業界では、キーエンスやデンソーなどが販売する赤外線リーダーを用いてバーコードを読み取り、物流管理を行っていました。
それに対してロジクラではiPhoneのカメラでバーコードを読み取ることで、検品や物流管理が簡単にできます。この仕組みによって、赤外線リーダーの使用に比べ、コストは1/10以下に削減できるのです。
物流事業者はこのソフトを利用すれば商品の受注から入荷、在庫、出荷までの物流管理を一貫して行えます。一方、私たちはロジクラによって得たビッグデータを活用して3つの新規事業に着手し、将来的には54兆円の過剰在庫のうち、少なくとも10%を削減したいと考えています。
物流管理を一貫して行うことが可能に
過剰在庫を削減することで企業のキャッシュフローが向上すれば、それが社会的土台となって中小企業が持続的に生存・成長していけます。大企業ばかりでなく、中小もスタートアップもともに歩める社会を実現する一助となれば、この事業を創った社会的意義があると考えます。