【新】エリック・シュミットが語る「学習する組織」Googleの秘密

2019/6/15
Googleといえば、スタンフォードで意気投合したラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンという2人の天才創業者の賜物というイメージが強い。だが創業3年目に、経営のプロであるエリック・シュミットをCEOに迎え入れたことが、ビジネス面での成長を決定づけたことを忘れてはいけない。

シュミットがサン・マイクロシステムズとノベルを経て、Googleにやってきたのは46歳のとき。ペイジとブリンは28歳で、社員の多くも大学を出たばかりの若者たちだった。20歳近くの年齢差がありながら、互いに敬意を払い、究極の「学習する組織」を彼らはどうやって作り上げたのか。

現在はGoogleの親会社アルファベットのエグゼクティブ会長職も辞して、MITの「インテリジェンスクエスト」というイニシアチブの顧問を務めるシュミットに、リード・ホフマンが話を聞いた(インタビューが行われたのは2017年2月8日)。
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【エリック・シュミット】Google創業者の若い2人の面接を受ける
リード・ホフマン Google創業者のラリー(・ペイジ)とセルゲイ(・ブリン)の面接を受けてみようと思ったきっかけは?
エリック・シュミット ラリーとセルゲイの第一印象は「若い」。オフィスの壁に私の履歴書がピン留めしてあって、テーブルには食べ物が用意されていました。「なんだかすごく変だな」と思ったのを覚えています。
【エリック・シュミット】最もスマートな人たちに問題解決を任せる
シュミット 創業者の2人は、スタンフォードの大学院のイメージで組織を作ったのだと思います。だからオフィスは――個室を持たせてもらえればですが――4人部屋でした。大学院生の研究室と同じです。
社内は混み合っていて、とてもカジュアルで、いつも食べ物がストックしてあって、ある意味でみんな1日中たむろしているような感じでした。
【エリック・シュミット】YouTube買収、スピーディーな決断が重要
シュミット ほとんどの大企業には、弁護士が大勢いて、意思決定者も大勢いて、責任が不透明で、物事が硬直している。少しずつそうなっていくんです。
でも、重要なビジネス案件は、非常にスピーディーに起こるものです。
GoogleはYouTube買収も約10日で決めました。極めて歴史的な事案でしたが、私たちは集中して一気に決めました。取締役会を開いたのも1回だけです。
【エリック・シュミット】「20%ルール」から生まれたもの
ホフマン 20%ルールから生まれた残念なプロジェクトはありますか。
シュミット ありませんね。
もともと20%プロジェクトは失敗するものと想定されていました。重要なのは、新しいアイデアを試して失敗する経験です。
【エリック・シュミット】成功する人間の決定的な「2つの資質」
ホフマン 学習するカルチャーを作るには、学習できる人材を採用することが重要ですよね。そういう人をどうやって探したんですか。
シュミット 採用アルゴリズムをたくさん開発しました。今ではこの業界全体で使われていますね。
【エリック・シュミット】データの裏付けがない決定は下さない
シュミット 私たちはデータの裏付けがない決定は下さないと決めました。
ひとたびそう決断すると、業界の慣行や伝統にならった決定が多いことに衝撃を受けます。「いままでずっとこうだったから」という考え方です。人間はそういうふうにできているんですね。
【エリック・シュミット】Googleがアルファベットに移行した理由
ホフマン Googleからアルファベットへの移行はどうやって決まったのですか。
シュミット 会社が大きくなってくると、私たちは組織を検討することに多くの時間を費やすようになりました。問題は何を選ぶかです。
【最終話・エリック・シュミット】世界中の牛が南か北を向いている
シュミット GoogleアースとGoogleマップではたくさんの発見があります。
最も興味深かったのは、Googleアースの画像を調べたところ、世界中の牛が南か北を向いている性質があるとわかったことです。牛の脳が地磁気に反応しているためです。
ですから、GoogleアースやGoogleマップで観測システムを構築すれば、興味深い新しいデータをたくさん発見できるのは間違いありません。
何でもそうですね。ビッグデータの時代ですから。
連載「イノベーターズ・ライフ」、本日、第1話を公開します。
(予告編構成:上田真緒、本編翻訳・編集:藤原朝子、バナー写真:ロイター/アフロ、デザイン:今村 徹)