ビル・ゲイツが選ぶ「この夏に読むべき5冊」
Inc.
2019/06/02
マイクロソフトの共同創業者が、恒例の「夏の休暇によむべき5冊」を発表した。軽い読み物とは言えない内容だ。
さまざまな問題を抱える世界の現状
夏の休暇が待ち遠しいのは、あなただけではない。大富豪や元大統領たちだって、デスクの前で夏の休暇に思いを巡らせているようだ。
まずはバラク・オバマ前大統領が、夏の読書を始めるのにぴったりだと考えるお薦めの5冊を紹介した。さらに、マイクロソフトの共同創業者で今は慈善活動家のビル・ゲイツが、夏のビーチバッグや機内持ち込みの手荷物に入れるべきお薦め本のリストを今年も発表した。
だがいつもながら、ゲイツのセレクションはスパイ小説や軽いミステリー小説ではない。どうやらゲイツも、私たちの多くと同じように世界の現状が気掛かりなようだ。
お薦め本を紹介するブログ投稿の中でゲイツは「いずれも、多くの人が気軽に読めると考える類の本ではない」と認めている。
「私は最近、世界の激動に関するいくつかの書籍に魅力を感じている。十月革命直後のソビエト連邦であれ、戦争中のアメリカであれ、経済システムの世界的な見直しであれ、だ。upheaval(激動)は、お薦め本のうち1冊のタイトルでもある」
混乱の中にある社会についての本を読むことで、自分が抱いている懸念が和らげられる、ということなのかもしれない。あるいはこれらの本が、解決を見出すうえでの刺激になる、ということかもしれない。
あるいはゲイツが単に、今は吸血鬼や秘密工作員の世界には集中できないだけなのかもしれない(とはいえゲイツは以前に、軽めのフィクションが大好きだとも明かしている)。
どんな理由で選んだにせよ、ゲイツの紹介リストは、さまざまな問題を抱える世界のことで頭がいっぱいな人がこの夏、夢中になれる本を見つけるうえで必見だ。
1.『Upheaval』ジャレド・ダイアモンド著(未邦訳)
「ジャレドの著作はどれも大好きで、この最新作も例外ではない。この本は社会が、危機の瞬間にどう反応をするかを探求している」とゲイツは書いている。「やや重いテーマに思えるが、読み始めた時よりも読み終わった時のほうが、私たちの問題解決能力について楽観的になれた」
ただし、ゲイツほどこの本を気に入らなかったレビュアーたちからは、この本には多くの不正確な記述があると指摘する声が上がっている。
2.『Nine Pints』ローズ・ジョージ著(未邦訳)
「血を想像すると気分が悪くなる、という人には合わないかもしれない」と警告したうえで、ゲイツはこう書いている。「だが、読者が私のような人間であれば、血液に特別な思い入れを持つイギリス人ジャーナリストによるこの本を楽しめるだろう」
「私は、ひとつのテーマに特化して掘り下げる本が大好きだから、Nine Pintsは私の好みにぴったりだった。9パイント(約4.3リットル)とは、平均的な成人の血液量のことだ。この本はとても興味深い事実に満ちていて、読み終わった後は、血液に改めて感謝の念を抱くことだろう」
3.『モスクワの伯爵(A Gentleman in Moscow)』エイモア・トールズ著(邦訳:早川書房)
ロシア革命時代、モスクワのホテルに32年間軟禁されていたロシア人の伯爵を描いたこの小説は、ゲイツの周りで人気があるようだ。
「私が知っている人はみんな、この本を読んだことがある模様だ。義理の兄弟から送られてきたので私もようやく読んでみたが、読んで良かった」とゲイツは書いている。彼によれば、この本は「面白く機知に富んでいて、驚くほど快活な、誰でも楽しめる素晴らしい物語だ」
4.『Presidents of War』マイケル・ベシュロス著(未邦訳)
「私がこの本を読んでみようと思った主な理由は、ベトナム戦争のあらゆる側面に興味があったからだ。読み終わる頃には、ベトナム戦争だけではなく、19世紀のはじまりから1970年にかけてアメリカが関与した8つの主な紛争について、多くのことを学んだ」とゲイツは紹介している。
この本は「大統領のリーダーシップ」について教訓をもたらしてくれた、とゲイツは書いている。
5.『The Future of Capitalism』ポール・コリアー著(未邦訳)
あなたは、現在のかたちでの資本主義がどうなるか、懸念を抱いているだろうか。意外かもしれないが、ビル・ゲイツもその一人だ。
「コリアーの最新作は、いま多くの人が最も重要だと考えているテーマについて、示唆に富んだ考察を行っている。私はすべてにおいて彼と同意見という訳ではないが──彼は解決策の提案よりも、問題の分析のほうが優れていると私は思う──、資本主義がどこに向かっているかについて、開発経済の専門家として賢い視点から考察していると思う」とゲイツは評している。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Jessica Stillman、翻訳:森美歩/ガリレオ、写真:Julia_Sudnitskaya/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.
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