【変革】農業から国を変える アフリカの「アグリプレナー」

2019/6/1

「貧困の象徴」からの転換

ヴォズベス・コフィ・アズマー(27)は大学を卒業した後、どんな仕事に就くつもりなのか、母親にさえ言い出せなかった。
「僕は農家だ」
ある日の午後、アズマーは耕したばかりの畑のそばで、バイクのエンジンをふかしながら言った。
「ここでは恥ずかしいことなのさ」
農家の人々が敬意を払われ、大地を耕すのは名誉ある仕事だと思われている国々もある。しかし、農業が自給自足の手段にすぎず、カットラス(短い剣)と、くわと、雨乞い頼みという土地では、貧困と同義語だ。
それでもアズマーのように、大学で学んだ若きアフリカ人のあいだで、農業を仕事にして不名誉なイメージを払拭しようと取り組む人が増えている。
科学的な手法やデータ解析プログラムを導入し、収穫量を増やすだけでなく、農業が儲かることを証明しようというのだ。
彼らは自らを「アグリプレナー」と称している。
もちろん、厳しい挑戦だ。
流通網が発達しておらず、道は悪く、水の供給は不安定という、ベテラン農家でも苦労する環境だが、彼ら農家志望者の多くは訓練も経験もほとんどない。
しかしアグリプレナーたちは、農業で収益を上げ、アフリカが抱える矛盾を打ち砕こうと考えている。アフリカ開発銀行のリポートによると、世界中で最も耕作に適した未耕作地の約65%を擁するアフリカ大陸は、年間350億ドルもの食糧を輸入しているのだ。
(Nana Kofi Acquah/The New York Times)

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