[ワシントン 29日 ロイター] - 米国防総省は29日、レアアース(希土類)の国内生産を拡大し中国への依存を軽減するため、連邦政府に資金拠出を求めていることを明らかにした。

国防総省のアンドリューズ報道官によると、同省はホワイトハウスに送付し、議会に説明したレアアースに関する報告書の中で資金を要請した。

レアアースはスマートフォンや電気自動車のモーターなど消費財だけでなく、ジェットエンジンや衛星、レーザーなどの防衛装備品にも使われている。

米中の貿易摩擦が激化する中、中国がレアアースを対抗手段に利用するとの懸念が高まっている。

アンドリューズ報道官はロイターに対し「レアアースの中国依存を軽減するため、国防総省は引き続き大統領や議会、国内産業と緊密に連携していく」と述べた。

報告書の詳しい内容は明らかにしなかったが、経済的なインセンティブを通じた国内生産能力の押し上げに関するものだとした。

中国はこれまでのところ、米国へのレアアース輸出を制限する方針を明確には示していないが、中国メディアは輸出規制が行われる可能性を強く示唆している。

中国の共産党機関紙・人民日報は29日の論説記事で、貿易戦争を巡る米国への対抗手段としてレアアースを利用する用意があると表明。「米国側は間違いなく、中国が輸出したレアアースで生産した製品を使って中国の発展を阻害したいと考えている。中国人民はこれを受け入れることは絶対にない」と主張した。

国防総省は今回の報告書について、防衛生産法(DPA)第3章に基づくものとしている。同省のウェブサイトによると、DPA第3章のプログラムは米大統領に対し、「経済的インセンティブを通じて国防および国土安全保障上の必要性を支える重要な国内産業資源を適時に確保できるよう幅広い権限」を与えるものという。

米航空宇宙産業協会の国家安保政策担当バイスプレジデント、ジョン・ルディ氏は、連邦政府の資金は重要資源の生産や加工能力、備蓄の拡大に活用される可能性があると指摘した。

米国内で操業が行われている唯一のレアアース施設はカリフォルニア州のマウンテン・パス鉱山だが、同鉱山を保有するMPマテリアルズは年間約5万トン生産しているレアアース・コンセントレートを中国に出荷して加工している。

関係筋によると、米国に拠点を置く少なくとも3つの企業がレアアース処理施設の建設を進めているか、または計画しており、うち1社はマウンテン・パス鉱山で来年、年産約5000トンの施設の操業開始を予定している。他の2社の操業開始は早くても2022年になる見通しという。

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