【独白】日本電産のカリスマ創業者を「ファイナンス」で支えた男

2019/6/4
企業の持続的な成長に優秀なCFO(最高財務責任者)が不可欠だということは、日本のビジネス界でもコンセンサスになりつつあるだろう。
そのCFOという役割で、モーター大手の日本電産で約9年間、カリスマ創業者を支えてきた人物がいる。新卒で三菱電機に入社し、外資系企業の日本法人の財務担当などを歴任した吉松加雄氏(61)である。
日本電産と言えば、現在もトップとして経営し続ける永守重信会長CEO(74)が、強力なリーダーシップで率いる京都企業。
吉松氏は2008年1月、その日本電産にCFO候補としてヘッドハントされた。当時49歳。その後、最年少取締役となり、2009年6月から2018年6月までCFOとして、海外企業のM&Aや買収企業との統合に力を注いだ。
「永守重信」というカリスマ創業者を、吉松氏は「財務戦略の右腕」としてどう支えていたのか。濃密な9年間を語った独占インタビューをお届けする。
吉松加雄(よしまつ・ますお)首都大学東京大学院特任教授、京都先端科学大学客員教授、前・日本電産専務兼CFO(最高財務責任者)。1982年、三菱電機入社。その後、サン・マイクロシステムズ(現・オラクル)日本法人、ベーリンガーインゲルハイム日本法人、エスエス製薬にて財務担当役員を歴任。2008年1月、日本電産に入社。同年6月に取締役執行役員。2009年6月に取締役・常務執行役員CFO(最高財務責任者)。2013年、取締役専務執行役員(CFO)。2018年6月に退任。慶應義塾大学経済学部卒、スタンフォード大学経営大学院修了。61歳(撮影:谷口 健)

買収60社「成功の秘訣」

──日本電産がM&Aを進める中で、CFOとしてはどこに注意したのでしょうか。「高値づかみ」をどうやって避けることができたのでしょうか。
吉松 日本電産は、創業以来45年で60社を超える企業を買収してきました。その中で、製品のライフサイクルによる設備や在庫の減損(評価減)はありましたが、私が在任中にのれんの減損はしていません。