【惨劇】人が理性を失う場所。「死の山」と化すエベレスト

2019/5/30

頂上付近で命懸けの行列

アリゾナ州の医師エド・ドーリング(62)は、子どもの頃からエベレストの山頂に立つことを夢見ていた。だが念願かなって登頂すると、そこには衝撃の光景が待っていた。
われ先に自撮り写真を撮ろうと小突き合う登山者の群れ——。卓球台を2つ並べたほどの広さしかない平らな地面に、15人か20人がひしめいていた。
頂上を目前に、ドーリングは何時間も待たされた。氷に覆われた険しい稜線に、登山ウェアで着ぶくれした人々が大行列を作っていたのだ。
足を踏み外せば、下は数千メートルの絶壁だ。しかも登山者は、死亡したばかりの女性の遺体をよけて進まねばならなかった。
「ぞっとしました」
ネパールの首都カトマンズのホテルで体を休めながら、ドーリングは電話で登頂体験を話してくれた。
「あれじゃあ動物園だ」
(Josh Haner/The New York Times)

スリルを求めて山に登る人々