2025年までに世界展開を目指す

世界初となる完全電動、垂直離着陸で5人乗りの「ジェットタクシー」が初飛行を無事に終え、お披露目された。
ドイツのスタートアップ、リリウム(Lilium)の目標は、車より5倍速く、オートバイより静かで、温室効果ガスを排出しないジェット機による運賃制サービスを2025年までに世界展開することだ。このジェットタクシーは、有人飛行と無人飛行の両方に対応している。
ダニエル・ウィーガンドCEOは「Bloomberg TV」の取材に対し、現在の手持ち資金は1億ドルだが、実用化のためには少なくとも同額を調達する必要があると述べた。従業員も現在は300人だが、あと数百人は追加する予定だという。
ジェットタクシーの航続距離は300キロで、ニューヨークとボストンを結ぶことができる。最高商務責任者(CCO)のリモ・ガーバーはあるインタビューで、ジョン・F・ケネディ国際空港とマンハッタンを結ぶ場合、運賃は1人当たり約70ドルで、ヘリコプターより安く、高級リムジンサービスと同等だと説明している。
リリウムが5月16日に発表したところによると、同社は5月4日、ミュンヘン近郊の拠点から実物大の試作機を飛ばし、飛行テストを開始したという。このジェットタクシーは、ターボファンエンジンのように空気を圧縮する電動ダクテッドファンを36基搭載している。
垂直離陸後、電動ダクテッドファンの向きが回転することで、従来の航空機と同じように水平飛行する。ヘリコプターの技術をベースにしたマルチローター・ドローンと比べ、エネルギー消費量を10%に抑えることができる。その結果、航続距離も10倍になり、電動航空機の大きな障害と見なされている距離の問題を克服できる。
プロペラの代わりにジェット推進機構を使用しているだけでなく、この機体には尾翼、方向舵、ギアボックスがない。推進装置内の可動部品も1つしかない。これによって安全設計を実現していると、リリウムは述べている。

2、3都市それぞれ20機でスタート

ウィーガンドCEOによれば、世界中の都市から引き合いが来ているが、まずは2、3都市を選び出し、各都市約20機で始める計画だという。この数は、採算ラインを上回るよう計算されている。
推進装置、バッテリー、複合材構造は自前で用意するとウィーガンドCEOは話している。会社の売却先を探すのではなく、自社で計画を進めるつもりだという。
すでにヨーロッパとアメリカの規制当局に認可を申請している。もし認可されれば、史上初の電動ジェット機となる。
経営コンサルティング会社のローランド・ベルガーによれば、現在、全世界で100以上の電動航空機計画が進行しているという。
リリウムにとって最大のライバルは、ジョビー・アビエーションやキティホークなどで、いずれもジェット推進ではなく電動ローターを使用している。エアバスやボーイングのほか、ウーバー・テクノロジーズと提携したベル・ヘリコプターなども電動航空機を開発中だ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Christopher Jasper記者、翻訳:米井香織/ガリレオ、写真:www.lilium.com)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.