【秘話】これが東洋の資本主義。ファーウェイ基本法の「正体」
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ファーウェイ基本法は、ミッション・ビジョン、バリューから、経営戦略、機能戦略まで明確に定めており、これが同社の組織力の源泉の一つになっているものと考えられます。欧米における企業戦略とマーケティングの要諦も網羅されており、経営学の教科書としても充実した内容になっています。
ファーウェイ基本法に定められた「ファーウェイは世界一流の設備サプライヤーになるために、情報サービス業には永久に参入しない」という条文では「情報サービス業」が何を指すのか明確ではありませんが、私はこの条文やこれまでのファーウェイの事業展開から、レン・ジンフェイはOSやアプリのレイヤーに打って出るつもりがないのだろうと考えてきました。
もっとも、今回の米国からの制裁措置によって、同社がOSに本格的に取り組むことは明白になったと思います。スマホ等のOSの階層でも、グレーターアメリカとグレーターチャイナで分断が進むのではないかと予想されます。
同社全体については、新刊のリサーチのため、徹底的に米国政府機関の文献等を分析しましたが、同社がスパイ活動をしているという明確な証拠はない一方、同社が中国政府の支援を受けて成長してきたことは確実です。そして5G技術では先行している。これが米国から見た問題の所在だと思います。
米国の真の目的は、ファーウェイの米国およびその同盟国での通信基地事業展開、特に5Gでの覇権を阻止すること、それに伴って中国政府が推進する「中国製造2025」の実行を中止させることではないかと見ています。
中国リスクが完全に顕在化したファーウェイは、もはや米中の戦いの縮図といえる存在です。グレーターアメリカでの事業展開やサプライチェーンから締め出される可能性も高い中、いかに自地域内でAI用半導体等の最先端テクノロジーも含めたサプライチェーンを構築できるか。
ファーウェイ側では、まさに国の威信をかけた総力戦で中国やグレーターチャイナ(中華圏)で完結するサプライチェーン構築を急ぐことになるでしょう。それをどのように行っていくのかについても基本法に書かれているような気がします。中国が日本の失われた20年を徹底的に研究し、轍を踏まないよう努めてきたことはよく語られますが、具体的に何をどう学び取ったのか。ファーウェイ基本法には、そのヒントが隠されています。
例えばファーウェイの強さの秘密として語られる1つに、莫大な研究開発費がある。その裏側では、新しい「東洋の資本主義」とも言える、売上高に対する考え方や当期利益の出し方、社員持ち株制といった制度が密接に絡み合い、トータル設計されていました。
日本やアメリカ、韓国などの資本主義を研究し、策定された「ファーウェイ基本法」について同社が取材を受けることは、まずありません。今回は、その中心メンバーだった中国人学者への貴重な取材機会を基に、記事を書き上げました。特集最終回です。面白いのは、このファーウェイ基本法は、日本企業によく見る、
法の支配的なガバナンスの為のコンプライアンス業務集ではなく、
経営方針をきめるときに振り返る参照できる
金科玉条として機能するように洗練されているところ。
そのため、シンプルに理解もできるし、これらを基に考えを深める
こともできる。ここまでのものを103条も作っているとなると、
任CEOのビジョナリーな力と経営力のバランスは相当なもので、
改めて巨人として恐れ多くなりました。