(ブルームバーグ): ボルカー元米連邦準備制度理事会(FRB)議長は先の金融危機後、過去20年間で社会を向上させたと言える金融イノベーションは現金自動預払機(ATM)だけだったと論じた。だがその後の10年でATM人気は下り坂だ。

ロンドンのRBRが20日公表した調査結果によれば、世界のATM台数は昨年、初めて減少した。銀行が支店を閉鎖し、デジタル決済に経営資源を振り向けていることが背景にある。世界の5大市場のうち、中国と米国、日本、ブラジルの4カ国での減少が響き、2018年の全体のATM台数は1%減った。5位のインドでは「伸びがかなり鈍った」という。

銀行顧客による携帯電話を介した日常的な金融サービスの利用が増えているほか、クレジットカードやデビットカードの利用が広がり、現金離れが進んでいる。米銀最大手JPモルガン・チェースは昨年、支店を2%削減した一方で、テクノロジーに108億ドル(約1兆1900億円)の資金を充てた。

世界のATM台数は初めて減少したものの、ATM離れは目新しい現象とは言えない。バンク・オブ・アメリカ(BofA)は12年にATMを減らしており、JPモルガンは15年に同様の措置を講じた。

ただ、昨年のような減少が毎年見込まれるわけではなく、新興国での増加が全体の減少を鈍らせるとRBRは予想。向こう6年間で世界のATMの台数は0.6%減少にとどまる見通しだとしている。「金融の包括的な取り組みがアジア太平洋と中東、アフリカ、中南米の新興国市場でATMの伸びを支え続ける」と資料で指摘した。

原題:ATMs, Once the Future of Banking, Starting to Become More Scarce(抜粋)

(最終段落を追加して更新します.)

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