Sijia Jiang and Michael Martina

[香港/北京 16日 ロイター] - ハイテク業界のサプライチェーンは中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]と深く結びついており、米政府がファーウェイと関連会社を規制リストに正式追加したことで混乱が避けられそうもない。

米商務省は16日、ファーウェイと関連会社68社について、米政府の許可なく米企業から部品などを購入することを禁止する「エンティティ―リスト」への正式な追加を発表した。

ファーウェイより経営規模の小さい同業の中興通訊(ZTE)<000063.SZ>は昨年、一時的に米政府の制裁対象となり、経営危機に陥った。規制リストへの追加でファーウェイも経営が悪化するとみられるが、影響は同社だけにとどまらず、米国のサプライヤーも打撃を被りそうだとアナリストはみている。

ファーウェイの昨年の部品調達700億ドル分のうち、クアルコム<QCOM.O>やインテル<INTC.O>、マイクロン・テクノロジー<MU.O>など米企業が110億ドル前後を占めた。ファーウェイへの規制強化で米企業はこの売り上げを失う。

一方、アップル<AAPL.O>など米国の製品メーカーは、主要な市場である中国から手痛い報復措置を食らう恐れがある。

中国に進出している米ハイテク企業の関係者は「かなりひどいことになる」と述べた。ファーウェイはサプライヤーを米国企業から中国企業に切り替えるのが難しく、少なくとも数年以内の移行は無理なため、厳しい事態に直面するという。

スマートフォンメーカーとしても世界2位のファーウェイは、昨年の売上高が7210億元(1050億ドル)と、ZTEの8倍、韓国サムスン電子<005930.KS>の半分だ。米国はファーウェイ製品が中国政府のスパイ活動に使われていると主張。ファーウェイは国際的に厳しい視線にさらされ、事業が圧迫されている。

ファーウェイが生産を抑制せざるを得なくなれば、アジアと欧州で多くのサプライヤーの経営が影響を被る。また、各国が次世代通信規格「5G」のネットワーク構築にしのぎを削っているだけに、ファーウェイの製品に依存し、米国によるファーウェイ規制に反対している通信業界も混乱に見舞われるだろう。

ファーウェイに半導体を供給しているサプライヤーの幹部は「ファーウェイは米国製の主要部品が手に入らなければネットワーク用サーバーを製造することができず、米国以外の国からの部品調達も停止するだろう」と述べた。ファーウェイはスマホについては社内で部品をそろえることができるが、サーバーやネットワークの分野では事情が異なるという。

ジェフリーズは、米国によるファーウェイの規制リスト追加は中国の5Gにとっても「悪夢だ」と指摘。中国は来年中に5Gを全国展開する目標を掲げているが、ペースが遅くなりそうだとした。

ただ、業界関係者によると、ファーウェイは規制に備えて半導体などの部品在庫を増やしている。ジェフリーズによると、当初は6カ月ないし9カ月分の在庫を目指していたが、最近は目標が12カ月に延び、一部では24カ月になっている。

ファーウェイの規制リスト入りが伝わるとアジアではファーウェイのサプライヤーの株価が軒並み下落。ファーウェイは、米政府に協力する用意があり、製品のセキュリティー確保のために実効性のある手立てを講じると発表した。

ファーウェイの輪番会長である徐直軍氏は最近のロイターとのインタビューで、不測の事態に備えて緊急対応策を立てていると述べた。

ただ、米中貿易協議が中国のハイテク業界に水を差せば、ファーウェイのサプライチェーンの痛みは倍化する。

NHインベストメント&セキュリティーズのアナリスト、ドー・ヒュンウー氏は「最大の懸念は、ファーウェイ製品を使っていた米国の同盟国が、米国の顔色をうかがってファーウェイとの取引を打ち切ることだ」と述べた。

中国に進出している米ハイテク企業の関係者は「米国はファーウェイを徹底的に叩くと決めたようだ。問題は、当面は米中貿易協議で妥結の見通しが立たたないため、米国がファーウェイの抹殺を急いだ点だ」と話した。