逆境をはね返すのは容易ではない。しかし適切な助けがあれば、必ずや立ち直れる。

レジリエンスの欠如がもたらすもの

挫折や逆境に直面したとき、それがきっかけで後戻りすることもあれば、それをバネにして前進することもある。それはひとえに、その人のレジリエンス(回復力、再起力)の高さにかかっている。
誰だって、失敗から立ち直り、さらに強い精神力を身につけたいものだ。とはいえ、それは「口で言うほど簡単ではないこと」の最たる例のひとつだ。
しかし、努力するだけの価値はある。レジリエンス(あるいはその欠如)は、私たちの行動や態度、結果、さらには健康に影響をもたらすからだ。
リーダーシップ育成を行うオンライン企業ベターアップ(BetterUp)が実施した新しい研究から、レジリエンスが低い人は、燃え尽きてしまう可能性が4倍であることが明らかになった。
さらに、職場でのストレスが「若死に」につながるケースは、年間で12万人に上る。そうしたストレスに関わる治療費は、アメリカの年間総医療費の5%から8%を占めている。
一方で、困難な状況をはね返す能力は、仕事に対する満足度の高さや責任感の強さ、組織への献身度の深さと関連づけられている。

何がレジリエンスの高低を分けるのか

では、レジリエンスの高い人と低い人の違いは何なのだろうか。
第一に、研究により、レジリエンスが非常に高い人について、ある事実が明らかになった。彼らは「コントロールする力は自分の中にある、と努めて考える」傾向が、6倍なのだという。
要するに「自分には人生における結果をコントロールする力がある」という信念、(そして、ベストでない結果に対してもうまく対処できるという信念)が強ければ強いほど、レジリエンスは高いということだ。
一方で、「コントロールする力が自身の外にあると考えている場合、自分は、周囲で起きている出来事によって苦しめられる被害者だという意識が強くなり、自らの力で立ち直る可能性が低くなる」と研究者たちは言う。
自分は被害者だと思うあり方は、エンパワーメントのまったく逆であり、非常に自らの力をそぐものだ。なぜならその底には「自分は無力だ」という信念があるからだ。その結果、何をやっても無駄だと思うようになり、行動を起こさなくなっていく。
さらに悪いのは、自分が自分自身に対してそれを行なっているという点だ。実際には、被害者になるのは1回きりだ。それ以降は、自発的に被害者になっているのだ。
よって、困難に直面し、それに立ち向かい、乗り越えなくてはならないときは、こう自問してほしい。「自分は、この状況に変わってほしいと思っているだけなのか。それとも、自分がこの状況を変えたいのか」と。
前者は、被害者の考え方だ。一方の後者は、被害者意識を捨て去る覚悟ができているという意味だ。
とはいえ、容易なことではない。そこで、レジリエンスを高める方法を4つ紹介しよう。

1. 自己効力感を高める

これは「逆境に突き当たっても、自分にはそれを乗り越える能力がある」という自信を持たなくてはならないということだ。そうした自分に対する自信があれば、背を向けたり逃げ出したりすることなく、目の前の事態に行動力と精神力をもって向かっていけるようになる。
こうした姿勢がまさに「予言の自己成就」(予言を信じて行動することで、最終的には予言が現実になること)につながることを、私は身をもって学んできた(ベターアップの研究もそれを裏づけている)。
自らの能力を信じる心を最大限に活かして、困難な状況を何とか乗り越えれば、自信はさらに深まり、再び困難や逆境に遭遇してもあまり怖気づかなくなる。それがひいては、さらなる成功へとつながっていく。

2. 認知的評価を変える

これは、困難な状況が意味することやその重要性をどう受け止めるかによって、その状態から生じるストレスへの対処法が変わってくるという意味だ。そして私たちは、困難な状況を脅威ではなく、チャレンジとして見ることを選べる。
出来事の受け止め方を変えるとはつまり、「その状況を経験することで成長できる」あるいは「何か良いことが得られる」という可能性に注目することだ。そこには、自分にはその状況に対処する能力や資質があるという見方が伴う。
半面、出来事を脅威として受け止めることは、自分の能力では目の前の状況に対処できないと考えることを意味する。その結果、恐怖や不安、怒りが生まれ、戦うか、逃げるか、すくんでしまうか、いずれかの反応が起きる。エネルギーは、問題解決ではなく、感情的な対処へと向けられてしまう。

3. 健康の大切さを無視しない

きちんと睡眠をとり、適切な食生活を送り、運動をする。そうすれば、身体は健全な状態に保たれるので、良い感情を支えてくれる神経化学物質が生まれ、免疫システムがうまく作用し続けるはずだ。こうしたことすべてが、レジリエンスの強化へとつながっていく。
ベターアップの研究では実際に、適度な睡眠をとっている人は、4.2倍の確率でレジリエンスが高いことがわかった。また、身体的な健康状態が良好な人は、レジリエンスが3.5倍高い傾向があったという。

4. 自分を支えてくれる人たちに頼る

自分を支えてくれる人のネットワークがあれば、ストレスに対処し、困難を乗り越え、新しい可能性を見出せるようになる。それがひいては、レジリエンスの高さへとつながっていく。
実際、外向的な人間はレジリエンスが高い傾向にあったが、それは、支えを必要としたときに他人に助けを求める可能性が高いからだ。自分を支えてくれる人たちを頼り、そのアドバイスを求めることも、レジリエンスの強化になることが証明されている。
レジリエンスを高めるのは難しい。そのためには、考え方や信念、勇気、強い覚悟がすべて関係してくるからだ。しかし、そうしたもののちょうど真ん中に、あなたが存在している。あなたは逆境に負ける必要はないのだ。
原文はこちら(英語)。
(執筆:Scott Mautz、翻訳:遠藤康子/ガリレオ、写真:Toa55/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.