【大河正明】「バスケブーム」仕掛け人に学ぶ、市場の作り方

2019/5/11
今日、5月11日に発足3年目のシーズンファイナルを迎える日本のプロバスケットボール「Bリーグ」。
実は日本のバスケ界は2014年からの2年間、社会人の実業団リーグ(日本バスケットリーグ)とプロリーグ(BJリーグ)の2リーグに分裂し、国際大会から締め出されたほど地の底を味わっている。
2015年の旧2リーグ時代の市場規模は、日本バスケットボール協会(JBA)と合わせてわずか20億円ほどだった。ところがBリーグ誕生2年目の2017年には、その10倍超の273億円まで拡大。
どん底から浮上し、今年9月には男子日本代表が13年ぶりのワールドカップ出場を果たす。さらに来年には、実に44年ぶりのオリンピックの舞台に立つ。
Bリーグは今、野球のイチローや、サッカーの三浦知良のように誰もが知るスーパースターは不在ながら、デジタルマーケティングやアリーナビジネスなど新時代の戦略でマーケットを切り拓いている。
毎年盛り上がるBリーグファイナル。今年は一般販売分が20分で完売した(©B.LEAGUE)
なぜ、スター不在のバスケは国際社会に復帰し、今や若者から絶大なる人気を得るほどになったのか。
「エンターテインメントとテクノロジーが融合したのがBリーグです。昭和のプロ野球、平成のJリーグ、令和のBリーグと言われるようになりたい」
そんな野心を明かす人物こそ、「Bリーグ」を率いる大河正明チェアマンだ。
大河正明/Bリーグチェアマン
1958年生まれ。京都大学法学部卒。三菱銀行(現三菱東京UFJ銀行)に入行。Jリーグで常務理事などを歴任。2015年にBリーグチェアマン(理事長)、2016年には日本バスケットボール協会副会長に就任した。バスケットボール競技歴は1975年に近畿高等学校バスケットボール選手権大会準優勝(写真:是枝右恭)
これまでの戦略から、2026年に向けたリーグ大改革まで、1万字にわたる大河チェアマンのロングインタビューをお届けする。スポーツ界に限らず、あらゆる企業にとって学びの多い内容になっているはずだ。

発足10年後、市場規模500億円に

──Bリーグが誕生して3シーズン目が終わろうとしています。この間、日本のバスケットボールはどれくらい市場拡大していますか。
大河 ざっくり言うと、この3年間で3倍くらいです。
Bリーグができる前年、2つの旧リーグと日本バスケットボール協会を合わせた事業規模はだいたい20億円、さらにクラブの売り上げを足すと100億円程度でした。
そこから2020年くらいに、Bリーグ、JBA、各クラブの事業規模を合わせて300億円、入場者数を300万人(旧リーグ時代の2015年は162万人)にしたいと考えてBリーグをスタートしました。3シーズン目の今季も成長をしているので、思い描いたくらいか、思い描いた以上のペースだと思いますね。
(写真:是枝右恭)
一方、ここから先のことを考えると、お客さんが来る箱(アリーナ)が大きくなり、かつ質も良くならないと、ビジネスとして次の非連続な成長は来ないだろうと実感しています。
その意味で言うと、「琉球ゴールデンキングス」の1万人規模のホームアリーナが本拠地の沖縄市に2020年にできる予定です。
アメリカ文化の影響を受ける沖縄ではバスケ人気が高い(©B.LEAGUE)
そして4月中旬、琉球に匹敵するか、それ以上の人気チームの「千葉ジェッツ」が、mixiさんと戦略的な業務・資本提携をして、自前で1万人規模のアリーナをつくってソフト・ハードの一体運営をしていくことを発表しました。
そうした箱が増えると、集客も増えます。入場者が増えれば、スポンサーの数や単価も上がります。加えて物販や飲食、ホスピタリティルームのサービスなどができるから、かなり飛躍的に伸びていきます。
これらを行いながら、Bリーグ発足から10年後の2026年をメドに、今の300億円を最低でも500億円に持っていき、さらなる良い成長を続けていきたいと考えています。