子供の価値観や人生観をふくらませるために
「5歳のときに憧れていた仕事を手に入れたんだね、おめでとう! どんな仕事をしているの?」
 今年1月、音楽業界のパブリシストでラジオ番組のホストを務めるエリック・アルパーがツイッターでこう呼びかけると、ユーザーが次々に幼い頃の夢を打ち明けた。
 教師や古生物学者になるという目標を実現させた人もいる。歌手のダニー・オズモンドは……まさに、歌手のダニー・オズモンドになるという夢をかなえた。
「プロの」バレリーナや宇宙飛行士、美容師を志したが、今は違う道を歩いている人も。鳥や猫、犬になりたいと思っていた人も少なからずいる。実に野心的な夢ではないか。
 アルパーの問いかけは、ツイッターでの問いかけに目的があるとすれば、大人になるにつれて夢が変わったか、どのように変わったかを、あらためて考えようというものだ。
「将来の夢」に縛られない
 ただし、組織心理学者でペンシルベニア大学ウォートン校教授のアダム・グラントによると、「大人になったら何になりたいか?」という質問は、子供にとって危険だという。グラントがニューヨーク・タイムズ紙に寄稿したエッセーによると、その理由は少なくとも3つある。
 1つ目の問題は、「仕事によって自分を定義させる」ことだ。アイデンティティと仕事が近すぎることは、大きなリスクを伴う。例えば燃え尽きやすくなったり、レイオフや業界の事情によって仕事を失ったときに、目的意識まで失ったりするだろう。失業すると鬱状態に陥りやすいことも、そうしたリスクを裏付けている。
 2つ目の問題は、人生において本物の情熱は1つだけ、という概念が具体化されることだ。実際には多くの人が、1つのキャリアに没頭しなくても、結果として幸せな(そして多様な)人生を送っている。
 3つ目の問題は、「子供の頃の夢をかなえて仕事にできることは、めったにない」ことだ。獣医や小児科医になれたらどんなに素晴らしいか、とにかく頑張れと背中を押され続けてきた子供が、実は血を見ると卒倒してしまうことに気がついて失望に打ちのめされるとしたら、あまりに虚しいではないか。
想像力を刺激する問いかけ
 では、子供にどんな人生を送りたいかと考えさせるには、どんな方法が好ましいだろうか。Quartz at Work の編集者ヘザー・ランディは、元小学校教師で現在は行政部門で働いている姉妹から、代わりにこんな問いかけがあると教わった。
「どんな問題を解決したいか?」
 この問いかけは、はるかに自由な議論へと──結果として、より活気のある議論へと──子供たちを導く。彼らの価値観について、さらには、彼らが世界に前向きな変化をもたらし得るさまざまな方法について、話がふくらむだろう。一般的な仕事を通じて、ボランティアや家庭を通じて、あるいはそれ以外の方法を通じて、どのような変化をもたらすことができるだろうか。
 ランディの娘のイジーは、2つの問いかけにどのように答えただろうか。母親から大きくなったら何になりたいかと質問されて、当時9歳のイジーは、肩をすくめてわからないと言った。しかし、おばから、将来どんな問題を解決したいかと質問されると、イジーは気候変動だと即答した。
「そこで私たちは、彼女がどんな方法で解決できるだろうかと話し合いました。科学者になるか、法律家になるか、それともジャーナリストになるか」と、ランディは振り返る。
 子供の想像力を刺激する賢い質問だ──そして、キャリアを変えようかと考えている大人にとっても、役に立つ質問だ。
原文はこちら(英語)。
(文:Sarah Todd、翻訳:矢羽野薫、写真:RichVintage/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with JEEP.