[北京 6日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)は6日、中小銀行を対象に預金準備率を引き下げると発表した。2800億元(410億ドル)規模の長期資金を放出することで、中小企業向け融資を促進する狙いがある。

引き下げは5月15日、6月17日、7月15日の3段階に分けて行う。地方の商業銀行約1000行が対象で、預金準備率は8%と地方の中小信用組合と同水準になる。中小銀行の預金準備率は現在10─11.5%。

人民銀は今回の措置が、小規模企業の資金調達コスト低下につながると指摘。中銀のウェブサイトに掲載した声明で「中小行は小規模の民間企業向け融資がしやすくなり、経済全体の下支えにもつながる」と述べた。

中国国務院(内閣に相当)は4月17日、中小規模銀行の預金準備率引き下げに向けた政策枠組みを構築する方針を示していた。

今回の預金準備率引き下げで放出される資金は、2018年1月以降に実施された引き下げの中で最小となる。

今回の引き下げは、中国株式市場の取引開始直前に発表され、数時間前にはトランプ米大統領が中国製品に対する関税引き上げを表明したばかりだった。

中信証券のアナリストは、これまでの預金準備率が通常、市場の引け後に発表されたことを踏まえると、今回の発表のタイミングは興味深いと指摘した。

一部のアナリストは人民銀の措置について、トランプ大統領のコメントを受けて動揺が広がった市場に安心感を与えようとしたものだとの見方を示した。

コメルツ銀行(シンガポール)のアナリスト、Zhou Hao氏は「市場を安心させ、通商協議の影響を相殺するための措置だ。困難な時期には刺激策を実施できるが、過度な緩和はしないというメッセージだ」と述べ、的を絞った引き下げは債務水準の抑制に向けた当局の決意を反映していると続けた。また、中国は通商協議が失敗に終わった場合に備えた格好だと指摘した上で、「市場は中国のデレバレッジの決意を過小評価し、通商合意に向けた意欲を過大評価していた」と語った。

野村(香港)の中国担当チーフエコノミスト、Ting Lu氏はリポートで「中国はここ2週間、ハト派色を弱めていた。米中通商摩擦が悪化すれば中国は特に金融政策スタンスを再びハト派に傾けるだろう」と指摘した。

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