「トイレの美化」にAIが活躍、各種センサーのデータで効率的に管理

2019/5/7
トイレの清潔さをモニターする
AIはこういうこともできるようになるんだなあ、と思った。トイレを清潔に保つために、一役買ってくれるのだ。
アメリカにいると、あまり美しくないトイレに遭遇することがしばしばある。公衆トイレはもちろんのこと、デパートやスーパー、レストランなどでも、今ひとつ目が行き届いていないことを痛感する。アメリカ系航空会社の機内もそうだ。
日本は、やっぱりすごいと感じる瞬間だ。トイレを清潔に保つのがその店の規律であることもあろうが、いつもきれいなトイレは何かしら身だしなみの一環として位置づけられているように思う。
そのあたり、汚いことは自分がやるべきものではなく、誰か他の人がやればいいという意識の持ち主が多いアメリカとは根本的に異なっているような気がするのだ。コスト削減も影響しているだろう。
さて、そういうアメリカだからこんなサービスが出てきたのだと思う。データでトイレの清潔さをモニターして、AIが効果的に清掃員を巡回させ、効率的に運営する方法を導き出してくれるというものだ。
「赤信号」へ向かう清掃スタッフ
そうしたシステムを開発しているのが、ザン・コンピュート(Zan Compute)というスタートアップである。
同社のテクノロジーは、センサーによるIoTのデータを収集して、施設の中でどのトイレのどこが掃除を必要としているかとか、どこのゴミ箱があふれているかといったことを管理人に知らせてくれる。施設の清掃スタッフは、赤信号が出ているところへ向かって取り急ぎ掃除をするということが可能になる。
清掃スタッフは通常、トイレットペーパーが切れていないかとか、液体せっけんがなくなっていないか、トイレが汚れていないかなど、定期的に建物を回ることで確認している。特に大きなオフィスビルや施設などでは、ひっきりなしにそうすることが求められるだろう。
ところが、そうした巡回時にタイミングよく作業が必要となるわけではない。確認した時にはきれいだったのに、その後すぐ汚れてしまいクレームが来るといったこともあるだろう。清掃作業員がまるでサボっているかのようにも受け取られるかもしれない。
ところが、トイレのいろいろな要素をIoT化してそれをうまく管理することができれば、次のようなことが可能になる。
トイレットペーパー・ホルダーや液体せっけんの容器につけられたセンサーが残量を知らせる。ゴミ箱につけられたセンサーが、中身があふれていたり異臭がしたりすると信号を送ってくれる。トイレのシートの掃除が必要あるいは床が汚れていると、その通知も送信されてくるといったことも可能だ。
トイレ以外にも応用の可能性
近年は「スマートビルディング」といって、建物の中をセンサーによってスマート化し、温度、湿度、自然光の当たり具合、空調の風などを細かく調整するようなテクノロジーが開発されている。
オフィスビルの居住性を向上させ、同時にエネルギーを節約するアプローチだが、それはトイレのような特定の場所でもっと詳細に展開することもできるわけだ。
ザン・コンピュートのプラットフォームには、コレクト(センサーのデータを集める)、キュレーション(データからAIがパターンを学習)、サーキュレーション(必要なスタッフに信号を送る)という3段階の働きがある。
ランチの後とか週末にはトイレがより汚れるとか、イベントが開かれる日には利用者が多いとか、そういったパターンが導き出されると、効果的なメンテナンスができるようになる。せっけんやトイレットペーパーなどの在庫管理も無駄なく行われる。
ここでは、「今すぐ」必要なアクションと「こうすれば効率的」という運営方法の両方がわかるというわけだが、これはトイレだけではなく他にも応用できそうだ。
いずれにしても、アメリカのトイレのような場所は、人間がきれいに保ってくれないのならば、早くAIに活躍してもらいたいと切望する対象である。
*本連載は毎週火曜日に掲載予定です。
(文:瀧口範子、写真:www.zancompute.com)