【最前線】令和世代は、テクノロジーで「不老」になる

2019/5/1
今日、祝福されながら生まれた「令和世代」の子どもたちがいる。
彼らの多くは21世紀後半を30代で迎え、82歳の高齢者として22世紀の世界を目にする。100年を生きる令和世代も少なくないだろう。
労働人口の減少が続く日本で、彼らはその長過ぎる後半生を労働力として期待されながら、衰えゆく身体で働き続けることになる。それは「幸せな長寿」なのだろうか。
そうした中、令和世代が生きる時代、世界の「景色」をまったく違うものに変えるかもしれないのが、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などのテクノロジーを総称した、「xR(x Reality)」だ。
それは、「空間」「時間」「感覚」の概念を軽々と超え、移動やコミュニケーションのあり方を根本から変える可能性を持つという。
これまでエンターテインメント分野を中心に進化してきたVR技術を、社会基盤として実装しようとする日本のVR研究の第一人者に、NewsPicks編集部はインタビューを敢行。
xRは、令和時代の僕らの暮らしをどう変えるのか見ていこう。
廣瀬通孝(ひろせ・みちたか)
東京大学大学院 情報理工学系研究科教授。東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長
1954年生まれ。1980年代に3Dの研究に関連してVR研究に携わり始める。1996年、日本バーチャルリアリティ学会の設立に貢献し、会長などを務める。

人間は身体的束縛から自由になる

「2020年代の終わりまでには、VRと現実は見分けがつかなくなり、あらゆる感覚と結びつく」
2045年にシンギュラリティ(技術的特異点)の到来を予測する未来学者、レイ・カーツワイルは、著書『シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき』の中でそう語り、VRについても指数関数的な進化を予言している。
そうした指数関数的な進化の先に、一体なにが起こるだろうか。
「身体的束縛」から自由になる──。そう予言するのは、東京大学バーチャルリアリティ教育研究センター長・廣瀬通孝だ。
廣瀬は、「バーチャル・リアリティ(VR)」という概念が生まれた1980年代から、日本のVR開発コミュニティを牽引し続ける第一人者である。
廣瀬 かっこいい言い方をすると、VRによって人間は、身体的な束縛から自由になる。そんな日が訪れると思っています。
身体的束縛、体験的束縛、いろんなものから自由になる。それは、人間の身体が老化しない、ある意味「人工」になる状況です。