[東京 26日 ロイター] - 3月の鉱工業生産が前月比0.9%減となり、1─3月期の日本経済がゼロないしマイナス成長となる公算が高まった。景気動向指数でも「景気後退」入りとなることが確実だ。しかし政府内では、4月以降の中国経済や世界経済の底打ち感に期待する声が目立つ。4─6月期がプラス成長に回復するなら景気悪化を強調する必要もないとして、10月の消費税率上げに向けた経済環境は、中国をはじめとする海外経済で見極めたいとしている。

<生産悪化で景気後退条件満たす>

「すでに景気後退と認定される可能性が一段と高まっている」──3月鉱工業生産が前月比マイナスとなり、景気動向指数上の「悪化」の条件が満たされたことで、第一生命経済研究所・主席エコノミストの新家義貴氏は今後も景気は綱渡り状態が続く可能性が高いとみている。

1─3月期の国内総生産(GDP)も、基礎統計としてウエートの高い鉱工業生産が前期比2.6%の減となったことから、当初はプラスとの見方が大勢だったものの、マイナスないしゼロ成長を予測する調査機関が目立ってきた。みずほ総研シニアマーケットエコノミストの末廣徹氏は、年率1.5%のマイナス成長と試算している。同氏は、見かけ以上に内容が悪く、民間消費はマイナス、設備投資も外需低迷により大幅減になると見込んでいる。

民間調査機関の間では先行きを楽観する声も多くはない。生産予測指数は4、5月とも上昇し、新年度入り後の日本経済は持ち直すように見える。しかし4月は10連休を控えて在庫積み増しの増産も含まれており、経済産業省が補正した予測では0.5%の減産予測となっている。5月の大幅増産予測も「異例の10連休の反映がうまく処理されているのか不明で、4月の実績を踏まえて判断する必要がある」(SMBC日興証券・シニアエコノミスト・宮前耕也氏)との指摘がある。

<1─3月は過去、中国指標の底打ち感に安堵>

景気後退との見方が広がれば、10月に予定されている消費税率引き上げ判断の元となる景気認識にも影響が出かねないが、政府に「緩やかな回復」という見方を変更する動きは見られない。景気動向指数の「悪化」判断も、経済指標を機械的に判断したものに過ぎず、政府の意向が反映される「月例経済報告」はそれと連動するものではない。

政府内では1─3月の景気についてはあくまで「過去のこと」と受け止める声も出ている。昨年秋以降の世界経済の減速による生産・輸出の悪化はすでに顕著に表れていた事実であり、マイナス成長に陥ることも予想の範囲内だった。

一方で、中国経済の底入れを示す指標に安どの声が聞かれる。

中国国家統計局が発表した3月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は業況改善・悪化の分かれ目となる50を4カ月ぶりに上回った。世界の荷動きを示すバルチック海運指数も、昨年末以来の悪化・停滞から、4月に入り上昇に向かい始めている。

今回の日本の景気停滞は、中国経済の減速を起点に世界経済に波及し、国内の生産・輸出に影響したものであり、こうした外部指標の底打ち感は、海外経済が心配したほどの悪化に至らないとの安ど感に繋がっている。

さらに、政府内には、今後の景気をみる上では国内指標より海外経済の方が説明しやすいとみる向きもある。4、5月の経済指標は異例の長さとなる大型連休の影響で振れが大きくなることも予想されるほか、4-6月期の経済実態を判断するには7、8月まで待つ必要があるためだ。

経済官庁幹部の一人は、世界経済がボトムアウトしてくれば生産・輸出の悪化も止まり、内需への波及も避けられるとみる。「1─3月のマイナス成長は致し方ないとして、4─6月にプラス成長に戻るのであれば景気悪化という必要はないかもしれない」との見方を示す。

(中川泉 編集:石田仁志)