【森岡毅】日本は戦略で勝てなくても、戦術で勝てる

2019/5/4
USJの再生で名を馳せた、森岡毅氏。現在は「刀」を設立し、沖縄テーマパークのプロジェクトなどを推進している。この令和時代に日本人に求めるられる「生き方」とは何か。『苦しかったときの話をしようか』を上梓した森岡氏に聞いた(全5回)。
【森岡毅】「自由な人生」と「クラゲ人生」

アメリカでのいじめ

──森岡さんの新刊の中で、最も印象的だったのは、第5章で描いていたP&Gのシンシナティ本社での苦闘です。異国の地でいじめのような扱いを受けながら、それを結果で乗り越えていくストーリーに心を打たれました。
アメリカのオフィスは、私の目には「セックス・アンド・ザ・シティ」に出てくるような嫌な感じに100倍輪をかけたような感じでした。
私はダサい田舎者のどんくさい、ほんとに世間知らずのくそ真面目な、だましがいのある、からかいがいのある人間だったと思いますよ。みんな頭がいいですから、いいようにやられましたね。
森岡毅(もりおか・つよし)/刀 CEO 1972年生まれ。96年P&G入社。P&G世界本社勤務などを経て、2010年にUSJ入社。 CMOとして同社を再建。17年、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立。著書に『マーケティングとは「組織改革」である。』など
──森岡さんからはすごく日本に対する思いを感じるのですが、シンシナティでの苦い経験は日本に対して意識的になるきっかけとなったのでしょうか。
それはあると思います。
私だけではなくて、おそらく海外で働いた経験のある人は似た傾向があるのではないでしょうか。海外に長く住むと、日本のことが相対的によく見えるのです。客観的に見えると言ってもいいですね。
日本で育ちながら、「壊れた日本人」と言われ続けた私が、やっぱり私は日本人だったのだと確信したのがアメリカで暮らした年月でした。
それはどういうことかというと、日本のよさは分かるし、アメリカのよさも分かるし、自分の中の日本人として頭の中の脳のアルゴリズムの中に枠がはまった、なかなか越えられない枠みたいなものを私でさえ感じました。
日本人として世界の競争の舞台に立ったときに、切なくなるぐらい、悲しくなるぐらい、「ああ、ここは苦手なんだよなぁ」と痛感するわけですよ。