【森岡毅】プロフェッショナルの核心

2019/5/1
USJの再生で名を馳せた、森岡毅氏。現在は「刀」を設立し、沖縄テーマパークのプロジェクトなどを推進している。この令和時代に日本人に求めるられる「生き方」とは何か。『苦しかったときの話をしようか』を上梓した森岡氏に聞いた(全5回)。
【森岡毅】なぜ日本人は弱くなったのか
自分以外の誰かのために
──第1回ではセルフ・アウェアネス、自らの軸を見つけることの重要性について語ってもらいました。仕事における軸とは、プロフェッショナリズムと強く関連しますが、森岡さんはプロ意識をどう定義していますか?日本の職人意識と似たものでしょうか?
職人意識の捉え方は千差万別ですが、日本人の職人意識とは、かなり重なるところがあるのではないでしょうか。
私は、プロフェッショナルの職能の一番の核心は何かというと、「世界に対して自分が価値をつくる」ということだと思います。それは、自分と社会の関わりの中で生まれる価値をつくり出すということです。
自分の中だけで完結する価値もまったく否定しませんし、人生のために重要なことですが、それは個人の楽しみであって、プロフェッショナルだとは思いません。
人の役に立たないものは、プロフェッショナルじゃないと思っています。
森岡毅(もりおか・つよし)/刀 CEO 1972年生まれ。96年P&G入社。P&G世界本社勤務などを経て、2010年にUSJ入社。 CMOとして同社を再建。17年、マーケティング精鋭集団「株式会社刀」を設立。著書に『マーケティングとは「組織改革」である。』など
かつてNHKの「プロフェッショナル」という番組に出させていただいたときにも、「プロフェッショナルとはなんですか?」と突然聞かれて、とっさに次のように答えました。
偶然に起こっているように見える中から勝つための法則を見つけ出す技術と、その正しい方向へみんなを引っ張っていく情熱。その能力を自分以外の誰かのために使う、それがプロフェッショナルだと思います。
一番重要なのは、積み上げた能力を世の中の人のために、もっと言うと自分以外の人のために役立てることです。
したがって、社会と自分の関わりの中から自分の特徴を見つけ出さない限り、プロにはなれないと思うのです。
私は自分のスキルを伸ばすための大きな動機は、私の場合は「世界に変化が起こせるかどうか」であって、それは世界に自分が働きかけた瞬間にドキドキして、「生きている」という気がするからです。
自分で考えた完璧に思える作戦でも、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。
うまくいくものにも、上・中・下があって、「下」は思った通りうまくいった、「中」は思った以上にうまくいった、「上」は信じられないくらいうまくいった、という想定外が起きます。
自分のプライドをかけて、仲間の時間とプライドをかけて取り組んだ仕事が、世界にどんな価値を生み出すのかが分かる瞬間に、私はものすごく価値を感じるのです。
私が子供の頃から髪を切ってくれている散髪屋さんがいるんですが、その方も同じようなことを言っていました。自分が髪の毛を切ることによって、その人の気持ちや生活がどう変わるのかを考えながら髪を切るのが楽しいと。
どんな仕事に就いている人も、自分と世界の接点に自分が働きかけている実感のために働くのだと思うのです。
私のプロフェッショナルの定義の核心は、その能力を自分以外の誰かのために役に立てるということに本気の価値を感じているかどうかです。