【独自ルポ】平成30年間で最も「衝撃的」だった3つの倒産現場

2019/4/25

「1日に22社」が潰れている

ついに平成が終わろうとしている。
この30年を振り返っても、帝国データバンクで倒産取材を専門に行っている情報部には日々、さまざまな企業や団体などから「取引先と連絡が取れなくなった」「倒産したと聞いた」「現状が知りたい」といった照会が数多く寄せられてきた。
2018年度(2018年4月~2019年3月)の全国企業倒産は8057件で、単純計算で毎日約22件の倒産が発生していることになる。
つまり、毎日のように倒産情報を耳にしては、それをもとに現場に駆けつける。倒産情報を得たら、取材記者がまず最優先でとりかかるのが「現地確認」だ。
たとえ電話がつながらなくても、事務所には役員や従業員がいて、現状や見通しについて話が聞ける場合がある。事業を停止して扉に弁護士名の受任通知書が貼ってあるかもしれない。
また、すでに建物から退去して他の場所に移転(移転通知)しているかもしれないし、そのまま所在不明になっている場合もある。
さらに近隣の人に話を聞くことで、有効な情報を入手できる場合もある。例えば「○日からシャッターが閉まっている」「社長が亡くなった(病気の)ようだ)」「取引先や銀行が訪ねて、社長を探しているようだ」といったものだ。
(iStock/ookinate23)
そうした現地取材のなかで、取材記者は時に忘れられない光景や場面に遭遇することがある。それはまさに「事実は小説よりも奇なり」という言葉の意味を実感する瞬間だ。
企業コンプライアンスが浸透していなかった20年ほど前は、現場を訪れた取引先の担当者が怒りに任せて、扉に貼られた弁護士受任通知を剥がしてその場で破き捨てたり、扉や備品を蹴飛ばして壊したりするケースも珍しくなかった。
しかし、今ではそのような光景を目にすることはまずない。倒産に対する取引先の対応はおとなしく上品になった。さらに審査や与信管理関連部門で働く若い担当者には、倒産現場を訪れたことがない人が増えた。
そんな時代だからこそ、今回は筆者が約20年にわたる倒産取材記者生活のなかで印象的だった3つの倒産事例を紹介する。
「昔はこんな倒産現場があった」ということを伝えることで、倒産がどれだけ過酷で辛いものかを少しでも感じてもらえれば幸いだ。

①土地にまで紙を貼る「占有屋」