銀行は一軒のみ。多くの人が給料を担保とする金融業者に頼るミシシッピ州の小さな町で育ったシーナ・アレンは、会社を立ち上げ、こうした人々を助けようと取り組んでいる。

育った町には小さな銀行が一軒のみ

お金を儲けるには、お金が必要だ。銀行にお金を預けるにも、お金が必要だ。それは、ますますハイテクになるこの世界においてさえも真実だ。
アメリカでは、連邦預金保険公社(FDIC)が「銀行口座を持たない人々」や「非銀行利用者」と見なす世帯数が3260万近くに上る。従来型の金融サービスに十分なアクセスがない人々であり、低所得層や移民、信用履歴を持たない若者なども含まれる。
30歳のシーナ・アレンは、ミシシッピ州の州都ジャクソンからかなり離れた場所にある小さな町テリーで育った。彼女の故郷の街には牛や馬たちはいるが、銀行は小さな銀行が一つあるだけだった。
「私の故郷のほとんどの人は、食料品店で小切手を現金化していた」と、アレンは述べる。そして、給料を担保とする金融業者など、搾取的なことも多い金融サービスを利用していたという。「私たちは困難を経験してきたので、解決策が必要だと考えている」
2016年の大半を金融業界の研究に費やしたのち、彼女は自分なりのソリューションを構築した。彼女が一緒に育ってきたような人々に対して、より良い金融サービスを提供するためのソーシャルフィンテック・アプリを提供する「CapWay」だ。

創業者の「根性、決断力、強い信念」

CapWayでは銀行口座残高や取引情報を確認できるほか、毎月のネットフリックスやスポティファイの引き落としで預金口座が空になりそうな時に知らせてくれたりする。
他の多くの銀行アプリと比較すると、機能はわずかだ。しかしアレンは、アクセスを持たないため大手の銀行サービスを利用していない人々に、彼女のテクノロジーが受け入れられると確信している。
アレンは、同じミシシッピ州出身のアーラン・ハミルトンから2万5000ドルの初期資金を調達した。
バックステージ・キャピタルの創業者であるハミルトンは、アレンの「根性、決断力、強い信念」を絶賛しており、CapWayの次の資金調達ラウンドをリードする投資家をアレンにつなげてくれた。
最近、自身のファンドに関する日常業務の多くから退いたハミルトンは「彼女は最初、過小評価されるかもしれない。彼女はサザン・ベル(米南部優雅な美しい女性への呼称)だから。けれども、彼女は人とのつきあい方がうまいし、現実世界で何が起こっているか理解している」と話す。「貧しいと、非常にお金がかかるのだ」

金融業界の専門家から集まる称賛

CapWayはまだかなり初期段階にあるが、この春にデビットカードサービスを開始し、年内にはスマートフォン対応の小口融資も始める予定だ(今月のネットフリックス料金を支払うお金が口座にない場合、CapWatなら有料で25ドルを貸してくれる)。
アレンは、会社の収益モデルについてはまだ検討中だと認める。これまでの売り上げには、CapWayの金融教材を使用する大学からの支払いや、デビットサービスや融資サービスを利用する顧客からの手数料などがある。
低所得層を搾取しない金融サービスを提供するうえで、最も難しい課題となるのは収益化だろう。多くの場合、低所得層は手数料で搾取されている。しかし、金融業界の専門家らは、アレンがこれまで成し遂げてきたことを称賛する。
銀行口座を持たない消費者についても研究している非営利団体「ファイナンシャル・サービス・イノベーション・センター(CFSI)」のチーフ・プログラム・オフィサー、ジョン・トンプソンは「これは大変なビジネスだ。アレンは、うまく機能するモデルを見つけ出すという難題に挑んでいる」と話す。
「だが、彼女らが提案してきたことは、現金だけの生活や店での小切手換金よりもかなり良い選択肢に見える」
一方、アレンは自分が選んだマーケットの複雑さに怯むことはない。「私たちなら利益を生み出し、社会に影響を与え、素晴らしい企業を生み出すことができる」
COMPANY PROFILE
会社名: CapWay
本社: Atlanta
創業: 2016年
従業員数: 8名
原文はこちら(英語)。
(執筆:Maria Aspan/Editor-at-large, Inc.、翻訳:新多可奈子/ガリレオ、写真:marchmeena29/iStock)
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This article was translated and edited by NewsPicks in conjunction with IBM.