【新】ホワイトカラーの仕事が危ない、本当の理由

2019/4/29
独自の視点と卓越した才能を持ち、さまざまな分野の最前線で活躍するトップランナーたちが、時代を切り取るテーマについて見解を述べる連載「イノベーターズ・トーク」。
第188回(全5回)は、神戸大学教授の大内伸哉氏が登場する。大内氏は労働法が専門で、技術革新が雇用に与える影響や、リモートワークやフリーランスなど、新しい働き方による政策課題を研究する。
働き方改革法が施行され、われわれ一人ひとりが働き方の見直しを迫られる時代。大内氏は2月に刊行した著書『会社員が消える 働き方の未来図』で、技術革新と働き方の変化にともない、「企業中心社会」から「個人中心社会」が到来すると述べる。
そこでは、なぜ働き方に変化が生じるのか、そして現代社会に横たわるあらゆる働き方の課題と未来への提言が、網羅的に語られている。
ちょうど先日、経団連の中西宏明会長が「経済界は、終身雇用なんてもう守れない」と発言。新卒一括採用や終身雇用などの「日本型雇用システム」が崩れる動きに、さらに拍車がかかりそうだ。
本連載では、前半は“中西発言”への意見も交えながら、技術革新により変化する会社や仕事について、そして後半は大内氏が提唱する「個人中心社会」で働き方のキーとなる、フリーランス論が展開される。
なぜフリーランスが会社員に比べて働くための手当や保護が薄いのかを、歴史的に解説し、そのうえで、現代社会に合った必要なサポートを提言する。
なかでも「同一労働同一賃金は間違った議論」「労災はいらないのではないか」など、法学者ならではの視点が興味深い。
木々が新緑を芽吹かせる季節だが、元号が変わる今年はとりわけ、日本を包む空気が新しさに満ちている。「自分はどう働きたいか」を、改めて考える機会ではないだろうか。

“中西発言”をどう見るか

──「正直言って経済界は、終身雇用なんてもう守れないと思っているんです」。経団連の中西宏明社長の、この発言が波紋を呼んでいます。この発言について、大内さんはどのようにお考えですか。
大内 経団連は会長が代わり、日本型雇用システムにチャレンジする姿勢を高めていたので、思い切ったことをするのではないかと、以前から私は見ていました。
この発言もそうした姿勢の表れでしょうし、ある程度予測できたことです。実際、『会社員が消える』にも、「日本型雇用システムの特徴を維持することは難しくなる」 と書いています。
経団連の言ういわゆる「終身雇用」は、労働法的には「長期雇用」や、雇用期間の定めのない「無期雇用」となりますが、この長期雇用が難しくなってきた。その背景にあるのが、第4次産業革命です。