【家入一真】SNSは弱者のための場所であるべき

2019/4/20
4/16の『The UPDATE』では、gumi代表取締役会長であり「FiNANCiE」ファウンダーの国光宏尚氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、「ONE MEDIA」創業者の明石ガクト氏、モテクリエイターでSNSアドバイザーの菅本裕子(ゆうこす) 氏の4名をゲストに迎え、今後、SNSはどのように進化するのか、議論を交わした。
視聴はこちら(タップで動画ルームに遷移します)。

承認欲求型のSNSは続くのか否か?

この日は、国光氏が先日書いた記事「僕はインスタやFacebookがそろそろ終わると思っている」をもとに、「承認欲求型のSNSは続くのか否か?」という問いから議論をスタートした。
ゲストらがそれぞれ続く・続かないと意見をのべるなか、遅れて番組に登場した家入氏が切り込んだ。
家入 最近国光さんがよく言うじゃないですか、「承認欲求は終わった」って。
マズロー(自己実現理論)でしょう?
僕もよく言っていたんです。承認欲求の時代は終わって、みんなが自己実現を求めるようになり、最終的に心の病を持つ人が増える。
でも最近、違う気がしてきた。
マズローの自己実現理論とは、人間の欲求は「①生理的欲求 ②安全の欲求 ③社会的欲求 ④承認の欲求 ⑤自己実現の欲求」の5段階に分けられ、ある程度の欲求が満たされると次の欲求が現れる。
家入 人は何度もあの(自己実現理論)中を、ぐるぐるまわっている。
今は欲求のてっぺんである、自己実現の段階にいるように見えるかもしれないけど、もう一度、最初の生理的欲求の役割に、SNSは戻ってくるんじゃないかなって。
これからは貧困や学歴、いろんな要因で二極化はどんどん進んでいく。この日本という国においても、生きていけない人は絶対に出てくる。
そのとき、SNSは次世代のセーフティーネットになりえると思います。
番組後半に再注目されたのは、家入氏が冒頭にのべた「セーフティーネット(生理的欲求)にSNS(の役割)は戻ってくる」という意見。
この発言が、MCの古坂大魔王が最も優れた発言におくる「King of Comment」にも選ばれた。
家入氏の考える、セーフティーネットとしてのSNSとはどのようなものなのだろうか。放送直後、家入氏に伺った。

ネットとリアルを区別し語るのは違和感

放送中、家入氏がたびたび発していたのは「弱い人」や「居場所」という言葉だった。そこにはどんな想いが込められていたのだろうか。
家入 パソコン通信の時代にはじまり、黎明期から一般の人たちに浸透していくまで、常にインターネットは、弱者の居場所であり続けた。
社会的事実のなかで生きていけなかった人たちが居場所を求めて、掲示板、ニコ生・ニコ動、Twitterなどに集まっていった。
そしてインターネットが普及していくにつれ、どんどん居場所が減ってきました。
これはリアルでも常に起きていることです。
たとえば、歌舞伎町や新宿二丁目は、マイノリティーであるがゆえに生きづらさを感じていた方たちがたどり着いた場所でした。
でも事件防止のために街が浄化されることで、またそこで生きられていたはずの人たちの居場所が失われていく。
SNSもリアルも、起きていることは全く同じ。
よくこういう議論の場ではネットとリアルを区別して語られますが、ネットだからとかリアルだからどうとか、二元論で語ることに僕は違和感を覚えます。
承認欲求や自己実現の話も分かるんだけど、SNSはそれだけでは語れない。
リアルもSNSも常に社会の仕組みからこぼれ落ちた弱者のための場所であるべきなんです。

SNSで生きていけるようになる、ただ危険性も

家入氏は、番組終盤「SNSは個人が小さく稼ぎながら、支え合いながら生きていく土台になる」と語った。SNSで稼げる仕組みは、今後増えていくのだろうか。
家入 国光さんの「FiNANCiE(フィナンシェ)」をはじめ、個人で稼げる手段は増えていくと思います。
そのこと自体はすごく素晴らしいなと思うし、僕もその動きを促進している立場。
一方で、個人が生きていくためのプラットホームが増えることへの危険性には自覚的でありたいです。
今言われている“個の時代”が本当に到来したら、みんな病むので。
会社という仕組みに息苦しさを感じる人は、フリーランスでも生きられる未来を喜ばしく語るんだけど、個人で生きるって人によっては結構しんどいと思います。
頼れる人もいない、自己責任が常に突きつけられるということだから。
僕は個人が稼いでいける仕組みをつくっている立場として、せめてそういう人たちが、ちゃんと生きていけるような場所を用意したい。
「リバ邸」というシェアハウスを運営し続けているのはそのためです。稼げる仕組みと生活費を下げる仕組みの両軸でやっていきたい。
番組内で平野啓一郎さんの分人主義の話や、資本主義がこれからどうなるかっていう話までできるともっとよかった。でも60分でよくあんなにも話しましたよね。
こういう公開議論に参加する時、いつもできるだけ抽象的なことを言うようにしているんです。
最終的に答えはないから、みんなでそれぞれ持ち帰って考えよう、悩もうってことを言おうとしているんですが。
でも観覧や視聴している方たちは、もっとすぐに役立つような知識を求めているかもしれない。
「家入が喋ることっていつもふわっとしている」ってよく言われるんですよ(笑)。これはすごくジレンマですね。

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<執筆:星彩華、編集:木嵜綾奈、デザイン:斉藤我空>