[東京 19日 ロイター] - 4月ロイター企業調査によると、英国の欧州連合(EU)離脱問題に関して、英国に関連する事業を行っている企業の9割が事業縮小や撤退は考えていないと回答した。サプライチェーンの見直しを検討している企業も16%にとどまり、EUの一般データ保護規則(GDPR)に対して準備を進めている企業は2割だった。

今回の調査期間は、4月3日─15日。調査票発送企業は478社、回答社数は237社程度。

回答企業のうち、何らかの形で英国に関連する事業を行っていると回答した企業は全体の26%を占めた。

これらの企業のうち、英国のEU離脱の動きを受けて事業縮小を検討している企業は8%、撤退を検討している企業はゼロだった。「現状維持」との回答が89%を占め、日本企業の多くは現時点で英国関連事業の見直しを考えていないことが示された。

「事業拡大」との回答は3%あった。

現状維持とした企業からは「事業は代理店を通しての販売のみで、影響は小さい」(機械)、「売上規模も少額であり、影響はほとんど受けない」(電機)、「事業はごく小規模のため」などのコメントが目立った。

一方、事業を縮小すると回答した企業からは「チェコに工場を新設し、英国での生産を一部移管する」(金属製品)、「英国子会社の事業の一部を取引先に譲渡することを計画している」(紙・パルプ)といった声があった。英国に代わる代替地としては、他の欧州諸国が最も有力とみられている。

英国が離脱すればEUとの間で関税が発生し、物流が停滞する可能性も生じるが、サプライチェーンの見直しを予定している企業も16%にとどまった。

「英国以外に需要先は多くあるが、それらについては現地生産拠点で対応が可能なため影響は軽微」(機械)、「客先への供給拠点変更で対応できる可能性がある」(輸送用機器)といい、英国での事業を維持しつつ、若干の供給網の見直しで対応できるとしている。

離脱後は、英国とEUの間で個人情報に関するデータの扱いにEUのGDPRが適用されることになる。しかし、個人からのデータ収集および利用目的に明示的に同意を得る準備をしている企業は21%にとどまった。個人情報収集を行っていない企業も数多くあるとみられる。

英国のEU離脱後の不安材料としては、「価格の上昇や手続き期間の長期化」(非鉄金属)、「英国の経済悪化」、「欧州全体の需要減退」(いずれも機械)、「英国経済の欧州域内での地位低下」(サービス)などが挙げられていた。

(中川泉 編集:石田仁志)