超進学校が実践。イチローも誇る、日本の「頭を使う野球」

2019/4/20
センバツ高校野球の“サイン盗み”の余波が続いている。
3月28日に行われた春の甲子園大会2回戦の習志野戦でサイン盗みをされたとし、審判や相手監督に抗議した星稜高校の林和成監督が4月15日、学校に無断で週刊誌の取材を受けたことなどから6月4日まで指導禁止の懲戒処分を学校側から科された。
日本高校野球連盟はサイン盗みを禁止しており、“悪事”を訴えた林監督が今回のような処分を受けるのはショッキングだ。
この一件には高校野球を取り巻く様々な問題が絡み合っているが(別の機会に記す)、そもそもの問題として、なぜサイン盗みは良くないのか。一つの理由として、「選手たちから考える機会を奪うこと」が挙げられる。
残念ながら一部の強豪高ではサイン盗みが横行し、投手の投げるコースや球種が伝達されている。来る球がわかることで打棒を発揮した選手たちが卒業後にプロの世界に進んだ際、打席でゼロから自己判断を求められるようになると、まるで打てなくなるケースが少なからずあるのだ。

野球は頭を使わないとできない

今回のサイン盗み騒動で個人的に思い浮かべたのが、イチローの引退会見だ。
「本来野球というのは、頭を使わないとできない競技なんですよ。でもそれが違ってきているのは、どうも気持ち悪くて。ベースボールがそうじゃなくなっているのは、危機感を持っている人がいると思うんですよね。日本の野球は頭を使う、面白い野球であってほしいと思います」
イチローの発言は高校野球の“サイン盗み”を念頭に置いたわけではなく、ビッグデータ化するメジャーリーグについて語ったものだ。その内容は「バズフィード」の記事が詳しいので、そちらを参照してほしい。
引退会見時のイチロー(写真:ロイター/アフロ)
今回筆者が伝えたいのは、日本の「頭を使う野球」の意義だ。高校野球でサイン盗みが横行する一方、頭を“正しく”使うチームも少なからずある。
その一つが、滋賀県立膳所高校だ。全国でも有数の京都大学進学率を誇る同校は、2018年春のセンバツ高校野球に21世紀枠で出場した。ベスト8進出を果たした日本航空石川に初戦敗退となったが、甲子園の大観衆をあっと言わせたのが独自のデータ野球だった。
「下手がゆえに行っている守り方なんです。できるだけミスを少なくしましょう、と」