【勝機】ハリウッド激変期に台頭する「富豪向けシネマ」

2019/4/12

上位1%のためのネットフリックス

チケット販売会社「チケットマスター」の元社長であるフレッド・ローゼンは、ウェスト・ハリウッドにある会員制の高級ホテルで、ハムチーズサンドを頬張りながら、「ベルト」について一席ぶっていた。つまり、腰に着けるベルトのことだ。
「ウォルマートなら4ドルで買えるが、グッチで買えば1500ドルもする」とローゼンは言った。
「つまり、どんな商品にも“豪華バージョン”があるんだ。そこで私は思いついたのさ。『映画はどうだ?』ってね」
実は、同じことを思いついた人間はローゼン一人ではない。
IT長者、ウォール街の大物、プロスポーツ選手、ロシアの大富豪といった超リッチな面々に、封切り直後の映画作品を高額で自宅観賞用にレンタルしようというアイデア自体は、かなり前から存在した。言ってみれば「上位1%の人々のためのネットフリックス」だ。
しかし、この手のビジネスは登場するたびに頓挫している。
2013年に、家電量販店のベスト・バイの肝煎りでスタートしたサービスは、初期費用3万5000ドルで、新作映画を1本500ドルでレンタルするというものだったが、映画館チェーンの機嫌を損ねることを恐れた映画会社は協力を渋った。違法コピーへの懸念も、マイナス材料になったと言える。
(Christian Northeast/The New York Times)

成否を握る「ハリウッドとの関係」