白血病薬でALS治験開始、京大 iPS細胞を利用
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Bosutinib(ボスチニブ)は、慢性骨髄性白血病と呼ばれる病気に対する治療薬です。このタイプの白血病の発症には、チロシンキナーゼと呼ばれる酵素がひと役買っているのですが、bosutinibはこの酵素を阻害する化合物で、白血病のコントロールに非常に有効な薬剤です。これを全く別物のALSという病気に使ってみようとは、普通の思考過程であれば思わないでしょう。
このように、既存の薬剤を全く異なる別の疾患に用いることをdrug repositioningと呼びますが、新規薬剤を用いることと比較して、安全性がすでに確認できていること、薬剤開発費用を必要とせずコスト削減につながること、などのメリットがあります。
高価に売れる新薬に比べて利益に繋がりにくいこともあり、製薬企業主導の研究が行われにくく、新薬開発と比べると活発な動きはみられませんでした。しかし、iPS細胞を用いて様々な病気のモデルが作製できるようになると、種々の薬剤を実験室でふりかけて効果を推測できるようになるため、このような治験が活発化することに繋がりそうです。
今回取り上げられたbosutinibという薬剤もその一例です。ALSの発症にもチロシンキナーゼという酵素がひと役買っているのか、未知のメカニズムがあるのか定かではありませんが、ALSに有効な可能性があるということです。多くの薬剤は体内での効果が完全に理解されているわけではないため、未知の効果がこのような研究を通して見出されることがあります。
ただし、これまでわかっている有効性はあくまで細胞レベルでの話ですので、この後に行われる臨床研究の結果を待つ姿勢が寛容です。iPS細胞研究所からの公式リリースです。
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/j/pressrelease/news/190326-140000.htmliPS細胞により多くの病気モデルが作製可能になったことで
drug respositioning(既存の薬剤を全く異なる別の疾患に用いること)を行いやすくなった。
これからは治験が活発に行われ
既存の薬剤で難病の進行を抑えられる可能性が高くなると良いです。