MCASについてはやはり誤解があるようなので、岩田さんの参照先の記事から仕組みを引用します。 “help pilots bring the nose down in the event the jet’s angle of attack drifted too high when flying manually” マニュアルでの飛行時に、機体の迎え角が過大となった(失速しそうになった)場合に、スタビライザートリムを補助的に作動させるのが目的です。 今回のポイントは自動操縦中にMCASが本来作動すべきでない状況で作動してしまったのがポイントです。737MAXがやや失速しやすくなった分を、ソフトウェア制御で補助しようとしたら、失速を防ぐのではなく逆にパイロットが対処できないような状況を生み出してしまっているということです。
焦点となっているMCAS(Maneuvering Characteristics Augmentation System)は,Alpha protection(Aplphaとは迎角)と呼ばれてきたもので,早くからフライ・バイ・ワイヤの導入が進むエアバスでは,A320から導入されていました.ボーイングは737MAXで初めて導入したと思います.
このシステムが原因の事故をエアバスは何回か経験しており,一番有名なのは1988年にA320がパリエアショーでローパス飛行をしたときに森に突っ込んだ事故.パイロットがこの機能をオフにしていました.また,Alpha vane(迎角センサ)に入り込んだ水が凍って固着して,正常に機能せずに失速して墜落した事故もあった(それほど前ではないと思うのですが見つけ出せず).
系統図を見たことがないので表面的な情報ですが,A320には3つの迎角センサの備えられ,多数決の理論で正しいと思われる値が決まり,また失速に関しては1つでも閾値を超えると失速判定が下る論理になっているそう.ちなみに,インドネシアの737MAXの事故の場合,2つある迎角センサのうちの1つが誤って閾値を超えたことが原因と思われるので,エアバスのロジックではダメということになる.さて,ボーイングはどう改善してくるか?
長期的にはセンサの数を増やしたり,迎角センサ以外の情報と合わせて判定,ということになっていくでしょう.
経済観点,云々の話が出ていますが,今回のMCASに限らず,旅客機はもはや機体固有の運動特性(つまり,自動制御を全てオフにして固有運動)のみで耐空証明が取得できなくなっています.たとえば,ダッチロールという固有運動を消散させるにはヨーダンパという自動制御系が必要で,パイロットの操縦のみでは相当頑張らないと消せない.それら安定増加装置はSAS (Stability Augmentation System) と呼ばれ,どの旅客機にも入っている.それを否定されると,空を飛ぶのを止めますか?ということになってしまう.
【追記】新技術のベネフィットとリスク.人間は感情でリスクを過大評価するバイアスを持っているので注意.ボーイングは,ベネフィット>リスク と評価したはずで,これが過ちであったなら批判にあたいする.
目下の悩みは,昼食 vs. NP活動
トランプ氏としては、2つの狙いがあるのだろう。
1.米国の孤立を防ぐ
米国ではなく、ボーイングとFAAを孤立させる
2.一般市民の、味方だと印象づける
世論の味方であるという印象を与えることで、自分の支持を高める
この感覚は、大統領というより、企業内のビジネスパーソン的。
https://mainichi.jp/articles/20190314/ddm/001/070/145000c
フェイルセーフの設計思想を世に広めたのが1950年代のコメット機の連続墜落事故でした。地中海上空で相次いで空中分解した事故は、コメット機が世界初のジェット機だけに衝撃でした。大がかりな原因調査の結果、客室内の与圧の繰り返しによる金属疲労で機体が破壊したものと分かります。
フェイルセーフの技術では世界の先頭にいると自任するボーイング社は「安全性には完全な自信を持っている」と疑念の打ち消しに躍起です。ボーイング社にすれば日本で導入予定のものを含め5000機以上を受注した新型機の信頼失墜は避けたいところです。
原因の解明が待たれます。
ただ、自国経済を考えてというよりは、民意がそっちによっているから、というのが判断の背景ではないかと思うが…ただ移動手段において安全性やそこへの信頼は生命線で、当初のFAAの判断はどうしてだったのだろうと思う。
そういえば、ライオンエアとエチオピア航空の墜落してしまった2件以外に、リスクが顕在化したが大丈夫だったケースはないのだろうか?
制御系のところが疑われているが、発生条件など含めて、事故にはなっていなくても解明につながるケースがあるかが気になる。
“help pilots bring the nose down in the event the jet’s angle of attack drifted too high when flying manually”
マニュアルでの飛行時に、機体の迎え角が過大となった(失速しそうになった)場合に、スタビライザートリムを補助的に作動させるのが目的です。
今回のポイントは自動操縦中にMCASが本来作動すべきでない状況で作動してしまったのがポイントです。737MAXがやや失速しやすくなった分を、ソフトウェア制御で補助しようとしたら、失速を防ぐのではなく逆にパイロットが対処できないような状況を生み出してしまっているということです。
乱暴な例えですが、自動車のエアバッグで例えると、車が何かと衝突した時に初めて作動してほしい機能が、なんでもない通常走行時に作動してしまい、かえって事故を招いている、というようなものです。
ですから、そんなものであればやめてしまう、というのも一つの手段です。現段階では、AOAセンサーが左右にあるので、その両方のデータを使うように改修することを考えているようですが、最悪MCAS自体オフにしてしまえば、それで良いようなものなのです。
通常飛行時にも、燃料効率が最もよくなるようにトリム角を調整する機能はありますが、それはあくまで自動操縦の機能の一つであり、MCASとは別のシステムです。MAXでない在来型の737にも装備されていますし当然他の機種でも多く装備されています。
FAAが今回ここまで及び腰であるのは、DC10の再来となる可能性を捨てられなかったからではなかったかと思います。DC10では、1979年のアメリカン航空の事故において、結果的には航空会社側の整備マニュアル違反であったものを、事故当初はエンジンパイロンの設計不良ではないかとして1ヶ月程度全世界で飛行停止させたことがあります。結果的に濡れ衣であったわけですが、DC10はその後の派生型の計画も潰れ、商業的には終わってしまいました。
ボーイングの経営に大きな打撃を与える可能性がある決定について、証拠をもとに議論したかったのがFAAの本音であったと思います。
残されたポイントはこのMCASの修正とアングルセンサーの増加で根治と言えるかどうかでしょう。
大丈夫と言われても、乗るのは不安です。
ハードは安全なんだろう、問題はソフトだと盛んにコメントされていました。UAは機体のやり繰りが大変になるのでは?というコメントもありましたが、どこの航空会社が多く飛ばしているのだろうか?
これが、本当にソフトの問題であれば、もしかしたら⁈の疑念はしばらく続きますね。