[東京 8日 ロイター] - 大手証券3社は、2018年度、19年度の主要企業の業績見通し(金融除く)をそろって引き下げた。中国経済の悪化で、製造業を中心に業績に陰りが出てきていることを反映させた。3社とも年度ベースの経常増益予想は維持しているものの、楽観的な予想とは裏腹に説明会では慎重な声も聞かれた。中国経済の動向が鍵を握っているとの見方が多く、19年度下期からの回復は、中国次第の色彩が強まっている。

国内景気が後退局面に入った可能性がある中で、企業業績がさらに失速すれば、消費増税実施の是非を含め、経済政策にも影響を与える可能性がある。

<18年度は最終減益予想>

「中国悪化の影響がだいぶ広がりを持ってきていて、規模感がもう一段大きくなった」──。

野村証券の松浦寿雄チーフ・エクイティ・ストラテジストは、足元の状況についてこう述べ、企業業績の先行きに強い警戒感を示した。

野村が予想した主要企業303社(金融除く)の経常増益率は、18年度が前年比5.0%増(前回予想8.9%増)、19年度が同7.5%増(同9.7%増)。増益基調は維持しているものの、3カ月前からは下方修正した。

気がかりなのが18年度の金融を含んだ主要企業334社の税引増益率予想。同0.8%減(前回予想1.9%増)とマイナス予想とした。

金融を除く303社も同0.7%増(同3.1%増)とほぼ横ばいの水準まで予想を引き下げており、松浦チーフ・エクイティ・ストラテジストは「金融含むが減益予想、除く金融も0.7%増と大きな余裕がない。経常利益も足元の業況悪化は厳しく、利益が圧縮、あるいは減益に突っ込んでしまう可能性もないわけではない」と厳しい見方を示した。

SMBC日興証券も、主要250社(金融含む)の18年度純利益増益率を前年比1.3%減(前回予想1.0%増)とマイナスに見直した。

日興証券SMBCの伊藤桂一チーフクオンツアナリストは「前年度は米国税制改正の影響で一時的な利益が乗っていたので、発射台が高かったという事情もある。だが、マイナス成長ではあるので注意しておきたい」と語った。

<来期上期まで減益か>

四半期でみると、足元の厳しい状況はより鮮明となる。野村が集計した10─12月期の主要企業303社(金融除く)の経常損益は前年比17.2%減と、4─6月期の同16.9%増、7─9月期の同9.8%増から状況が一変している。

野村は来期、利益の伸びが加速するシナリオを描いているが、松浦チーフ・エクイティ・ストラテジストは「おそらく来期の上期までは減益が確定で、戻るとしても下期からではないか」との見通しを示した。

同氏は15年度から16年度にかけての悪化・回復パターンと今回を比較し、「当時は売り上げがV字回復することで業績が大幅に回復した。しかし、今回は売り上げがまだ増収なので、トップライン主導の戻りは厳しいかもしれない。逆に言えば、来期の下期の戻りはそれほど強くならない可能性がある」と警戒感を示している。

SMBC日興証券の圷正嗣・チーフ株式ストラテジストも「来期の4─6月期はまだ大幅減益だが、7─9月期は減益幅縮小、10─12月期、1─3月期は中国景気の好転等を考えるとおそらく増益になってくるだろう」と下期回復を見込んでいる。

ただ、野村とは違い、同社の主要企業224社(除く金融)の経常増益率予想は18年度が前年比7.1%増(前回予想9.8%増)、19年度が6.1%増(同7.8%増)と伸びがやや鈍化する見通しとなっている。

大和も鈍化予想だがSMBC日興よりもその度合いが大きい。主要企業200社の経常増益率予想は18年度の前年比8.4%増(前回予想9.8%増)に対し、19年度が2.4%増(同7.9%増)と伸び率は大きく低下すると予想している。

大和は2020年度予想も出しており、経常増益率予想は前年比5.5%増と、19年度2.4%増から加速を見込んでいる。

大和証券の高橋和宏・株式上席ストラテジスト「2020年度予想は増益率が高まる。新たな成長局面が展望される中で、今は待つ時期になる」と語った。

企業の業績予想は結局、中国経済次第の面もある。SMBC日興の圷チーフ株式ストラテジストは「過去の中国の景気サイクルをみると、政府が財政や金融を緩めてから実体経済に波及してくるパターンが数多く起こっている。足元でこの兆候がみえてきたということは、中国景気は年後半持ち直してくる」との見通しを示した。

(志田義寧 編集:田巻一彦)