【内幕】グーグル、Netflixの異才「東京集結」の舞台裏

2019/3/13
2015年、米グーグル本社のロボティクス部門でトップを務めていたジェームス・カフナーは、ある人物に接触していた。
ギル・プラット。アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)出身のロボティクス専門家で、今はトヨタのAI研究機関トヨタ・リサーチ・インスティテュート(TRI)のCEOを務める人物だ。
ギルをグーグルに誘おうとしたジェームスだが、最終的にギルは別のアイデアを提案することになる。
共にトヨタで働き、世界を変えていこう──。
特集「トヨタ“第3の本社”」第2回の本日は、前回に引き続き、米グーグルの自動運転開発が極秘プロジェクトだった時代の創設メンバーの一人で、2016年からトヨタに参画した、ジェームス・カフナーの独占インタビュー中編をお送りする。
*インタビュー前編(第1回)の記事はこちら

ギル・プラットという男

カフナー 僕がグーグルでロボティクス部門のトップを務めていた2015年ごろ、ある人物に接触しました。
ギル・プラット。アメリカ国防高等研究計画局(DARPA)出身のロボティクス専門家です。ギルとは20年以上の付き合いで、研究者としての彼をずっと尊敬していました。彼のファンなんです。
最初に出会ったのは、彼がマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授時代で、歩行ロボットを研究していたとき。彼の大きな功績のひとつは、人の関節のように柔軟に動くアクチュエーターを発明したこと。
これは、ロボットのアクチュエーターのデザインにおいて、世界的なブレークスルーをもたらしました。
一方、当時の僕はカーネギーメロン大学で人型ロボットの研究をしていた。2000年にMITが初めて「人型ロボット会議」を主催した時、彼の研究室を見せてもらい、僕はそこの学生たちとも交流しました。
その後、僕はカーネギーメロン大学で教授になり、2007年には「人型ロボット会議」の総議長にも就任した。その間、ギルの研究室の生徒と、僕の研究室の生徒間の交流が続きました。
そのうちギルは、2010年からDARPAで働きはじめ、プログラムマネジャーとしてロボティクス・チャレンジを主催する側になりました。
自然災害などの際に活躍するロボットを競う「DARPAロボティクスチャレンジ」を主催していた2015年頃のギル・プラット氏。(写真:Chip Somodevilla/Getty Images)
その頃の僕は既に米グーグルで自動運転車を手がけていて、彼が開催したロボティクス・チャレンジに参加した企業を買収したりもしています。
2013年にグーグルがボストン・ダイナミクスやシャフトといった、いくつものロボット企業を買い占めていた、ちょうどその頃ですね。
僕は彼の学術研究のファンだっただけではなく、こうした競技会を通じて、最先端技術を前進させようという情熱にも感化されていきました。

ロボットの「カンブリア爆発」

ギルは2015年に、ある論文を書いています。
「ロボット界でカンブリア爆発は起こるか?」(Is a Cambrian Explosion Coming for Robotics?
カンブリア爆発というのは、生物の目が進化して「視覚」を手にしたことで、生物の種類が急激に増えたという学説です。
ロボットの視覚にあたるのは、コンピュータビジョンの技術、認知、そしてディープラーニング。これらが発達したことで、自動運転車や家庭用ロボなど、ロボットも爆発的に種類が増えるのでは──?
今、ロボット界が極めて面白いのは、まさにこのためです。センサー、クラウドコンピューティング。すなわち、経験やスキルをシェアする「クラウド・ロボティクス」。
そういった技術がようやく実を結びはじめ、人々の生活をよりよいものにする新しいテクノロジーを生み出せる。
僕がよくギルと話していたのも、クラウド・ロボティクスについてでした。