情報革命はまだ入り口にすぎない。AIの本当の破壊力で世界を変えないか

2019/3/11
情報産業の最先端でさまざまな事業を展開してきたソフトバンク。現在はAIやIoT、自動運転、5Gなど幅広い領域で新規事業やジョイントベンチャーを立ち上げ、世界中にインパクトを与えている。

この変化の激しいソフトバンクを支え、同社の未来を作っている“人”に対して、会社はどのような人材戦略を敷いているのだろうか。人事本部 採用・人材開発統括部 統括部長の源田泰之氏に話を聞いた。

情報革命を軸に、新規事業を作り続けた歴史

世の中的に、ソフトバンクは「携帯電話会社」というイメージがあると思います。
しかし、ソフトバンクグループはパソコン用ソフトウェアの流通事業から始まり、ブロードバンド事業、携帯電話事業とメイン事業を何度も替えながら成長してきた、いわば新規事業を作り続けてきた会社です。
最近は、5Gの商用化を見据えた新たな取り組みにも積極的に挑戦。また、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが出資する、優れたテクノロジーやビジネスモデルを持つ企業とジョイントベンチャーを設立するなど、日本で新規事業を続々と立ち上げています。
たとえば、コワーキングスペースの「WeWork」や、最先端ロボットを開発する「Boston Dynamics」、自律走行システムを開発する「Brain」などと連携して、ロボットやAI、自動運転などの分野において日本で新規事業を実現させています。
2010年に発表された「ソフトバンク 新30年ビジョン」で孫が語った「ロボットの進化によって働き方は変わる」「AIが世の中を劇的に変える」「クルマはすべて自動運転になる」といった未来に、この9年間で着実に近づいています。

年間600人が社内公募で異動。挙手制で挑戦する文化

ソフトバンクが常に新しいことに挑戦できる理由として挙げられるのは、会社として「チャレンジしたい人を応援する制度」をたくさん用意していることです。
実際、今年度は通常のローテーション以外に、社内公募で約600人が多様な新会社や新規事業、希望する部門、グループ会社などへの異動が決まりました。これはすべて個々の自発的な挙手によって実現しています。
また、社内研修機関である「ソフトバンクユニバーシティ」を活用して年間約1万人がワークショップ等に参加し、プレゼンやロジカルシンキング、テクノロジー、コーチングなどを学んでいます。
約70の集合型コースから受けたい人が受ける自発的な仕組みですが、従業員数が1万7200人と考えると、いかに社員が積極的に学んでいるかがわかると思います。
さらに、自ら事業を立ち上げたい場合は新規事業提案制度の「ソフトバンクイノベンチャー」への応募も可能。年数回の募集があり、これまで累計6400件の応募のうち13件が事業化しました。
若い人がどんどんチャレンジできる土壌がある一方で、50歳以上を対象とした社内公募制度も行っています。
ある程度の年齢になったとき、このまま自分は働き続けられるのだろうかと不安に思う人もいるでしょう。だからこそ、年齢や役職、国籍に関係なくチャレンジできる環境を用意することが大切だと考えています。

失敗は恥ずかしいことじゃない。何度でも挑戦できる

私たちがこれほどまでに挙手制でチャレンジしたい人を応援する理由は、変化が激しい世の中では、一人ひとりが多様な経験を積むことで、ソフトバンクの外でも通用する人材になることが大切だと思うからです。
そのためには、受け身で言われたことに身を委ねるのではなく、自分で本気になることが重要。
とはいえ、いくら会社が挑戦の機会をたくさん設けたとしても、失敗したときに「恥ずかしい」と思ってしまったり、「あの人失敗したらしいよ」とうわさが飛び交うような風土では、誰も手を挙げなくなります。
その点ソフトバンクは、常に新規事業を立ち上げて挑戦してきた歴史があるから、誰も失敗したことを「恥ずかしい」と思わない文化が根付いているんですね。
実際、非常に狭き門である、ソフトバンクグループの後継者育成・発掘機関「ソフトバンクアカデミア」に、毎年のように応募する人がたくさんいます。
また、若い社員にも課長や部長としての役割を課長代行、部長代行としてお試しで任せることがあります。力量が見合わない場合は元のポジションに戻りますが、パフォーマンスを発揮できたら課長や部長として活躍してもらう。
課長や部長になれなかったとしても、失敗だと恥ずかしく思う必要はありませんし、課長や部長に適していると判断されれば役職はバトンタッチされます。こうした柔軟な挑戦ができるのも、ソフトバンクの特徴です。
70歳、80歳まで働くのが当たり前になったとき、大切なのはどのように中長期的なキャリアを作っていくか。
役職者になることが偉いのではなく、何ができて、やりたいことをどれだけ実現できる人材になれるのかが重要です。だから、実践の場としてチャレンジの回数を増やせるよう工夫しており、それが約600人の社内公募での異動につながっています。

社内転職をしながら中長期的キャリアを構築する

これから日本でも人材の流動は増えていくと思います。でも、日本では転職後の満足度が前職に比べると下がるという統計データが出ているんです。原因の多くはカルチャーのミスマッチ。
だけど当社なら、カルチャーがフィットして入社した後は、ロボットをやりたいと思えば手を挙げればいいし、宇宙の事業をやりたいと思ったら手を挙げたらいい。
カルチャーフィットを維持した状態で、自分のやりたいことに挑戦できる、“社内転職”が実現できるため、中長期的にキャリアを描きやすいでしょう。
しかも、年間600人規模の異動ができるほど、新規事業やジョイントベンチャーを積極的に立ち上げており、かつ多ジャンルなので、年齢に関係なくチャレンジしやすいのが、他社にはない面白さかもしれません。
日本企業で挑戦しようとすると、組織規模と自分の裁量がトレードオフになることが多いと思います。
たとえば、大企業なら影響力の大きな仕事に携われても裁量は小さく、スタートアップなら最先端のサービスに責任者として携われても社会的インパクトは小さいというジレンマがあるかもしれない。
だけど、ソフトバンクは資金や人材、バックオフィスなどのアセットをフルで生かし、ジョイントベンチャーを一気に拡大していくので、スタートアップのように大きな裁量を持ちながら、世の中に大きなインパクトを与えられる事業を経験できる可能性が高い。
ここまで、大企業とベンチャーのハイブリッド型を体験できるのは、他にあまりないと思っています。

本当の情報革命はこれから。AI 事業で世界を変える

私たちが掲げている情報革命は、すでにインターネットの普及やスマホの浸透によって、農業革命以上の革命は起きたと思います。
10年前、自動運転と言われてもピンと来る人は少なかったのが、たった10年で自動車業界は大きく変化し、自動運転が実装されています。
でも、本当の情報革命はこれからです。もちろん、HRテックやRPA(ロボティクス・プロセス・オートメーション)などのテクノロジーやAIサービスで、確かにさまざまなことが便利にはなりました。
だけど、AIによって激変した産業はまだありませんし、「AIが実際の生活を変えた」とは言えないでしょう。
だからこそ、この領域に全力で挑戦し、これから始まる情報革命の“ど真ん中”で世界にインパクトを与える企業になりたいと考えています。
こうした状況下で、エンジニアの重要度はすごく増しています。新規事業を立ち上げるにあたって、グローバルで活躍できる人やAI、IoT、ロボティクス、ブロックチェーンなどのエンジニアはまだまだ足りていません。
テクノロジー自体に価値があるのではなく、それが人を幸せにするサービスになり、世の中に貢献することで初めて価値が生まれます。
だから、エンジニアの持つ技術力で事業をつないでほしい。ソフトバンクという会社の広いフィールドで才能を生かしてほしいと思っています。
何かやりたいことが明確なら、間違いなくその領域の会社を選ぶべきです。だけど、やりたいことが明確ではないけれど、面白い仕事や働きがいのある仕事をしたいと思うなら、ソフトバンクは最適だと思います。
産業がITやAIで大きく変わる今、それを牽引しようとしている会社に身を置くことは、これからの人生を面白くするかもしれませんよ。ワクワクする明日を一緒に作りませんか。
(取材・文:田村朋美、写真:岡村大輔、デザイン:國弘朋佳)