【猪瀬直樹】処女作『天皇の影法師』。改元で宮内庁のテキストに
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昭和天皇の崩御は1989年ですが、その前後、「天皇ブーム」というべきものがありました。主に歴史学や民俗学界隈から始まりましたが、網野善彦の『異形の王権』が1986年、猪瀬氏の『天皇の影法師』はそれに先駆けて1983年に出ています。『ミカドの肖像』が1986年です。
時あたかもバブル経済とその崩壊の時期にあたります。単に天皇の代替わりというだけではなく、近代以降の日本の進んできたあり方とその見直しが求められる中で、天皇(制)への理解も求められるようになりました。なお、1995年には野口悠紀雄氏によって1940年体制論が唱えられます。日本の現在の官僚制や働き方、社会保障は総力戦の戦時体制構築の産物であるという主張です。しかし、日本の官僚制は明治期からつくられてきたものの延長上にあることは確かです。
網野善彦や梅原猛のような歴史学、民俗文化論的な天皇論と関係あるのかはともかく、明治以来の官僚制が天皇と不可分であったことは確かです。大久保利通や山県有朋たちは官僚制を構築する際に、天皇という装置を不可欠のコアとして用いました。天皇が日本社会の基層でそこに日本の官僚制の原因がある、といった議論には疑問がありますが、日本の官僚制の問題は責任や自我といった人間と社会のあり方に関わる問題で、日本の歴史を通してつくられた人間と社会に基づいているとはいえます。内容と関係ないですが「猪瀬さんの処女作」って改めて文面でみると なんで作家はみな処女なんだ?
と気になって調べてしまいました。
varginではなくmaiden workの訳とのこと。処女航海、処女地も一緒のようです。
vargin work であれば「童貞作」の訳語もあてられるが、maiden は女性名詞だから 処女一択とのこと。
でも、そもそも映画監督の処女作とかあまり言わないですね。デビュー作とか。
文学書籍を出版する場合にわりと限定されているのは独特な文学者に対する敷居があるように感じました。