【松田憲幸】27歳、年収1000万の誘いと日本支社長のイスを蹴る

2019/3/12

先輩宛ての電話に出てヘッドハント

IBMの名前ではなく、自分の名前でお客さんから指名されるようになりたい。そんなふうに思うようになったある日、会社に電話がかかってきました。
受話器を取ると、英語です。
“Can I speak to Mr. ×××?”
それは先輩社員にかかってきた電話だったのですが、たまたまその人は席をはずしていました。
そこで私が“He is not here. ”と答えると、先方が“May I have your name? ”と言いました。
そこで私は“I am Nori and working with him as system engineer.”と答えました。
すると電話の向こうの人が“I would like to talk to you in more detail. Could you come to our office?”と言ってきました。
ヘッドハンターからの電話だったのです。
本当はその先輩社員にかかってきた電話だったのですが、おそらく英語を話せて、システムがわかる人間なら誰でもよかったのでしょう。
「なんか英語もしゃべるし、SEだと言っているから、人違いだがこいつでもいいや」と私にもターゲットを向けたということです。
それで後日、会って詳しい話を聞いてみると、有名外資金融系のシステム部門のマネジャーになりませんかという誘いでした。
当時私は27歳でしたが、提示された年収が1000万円。当時の年収は600万円強。そのころまで年収に興味はなかったのですが、年収が高くなった分、社会貢献にお金を使えば正しいというふうに考えるようになったのはこのころです。
これで踏ん切りが付き、IBMには申し訳ないですが、「すみません。辞めます」と告げました。
すると上司に、「何考えてんだ、お前」と言われました。「明日なきソフトウェア業界」と題した『日経コンピュータ』の表紙を見せられ、「こんな時代なんだぞ。大丈夫か」と慰留されました。
それでも私の退職の意志が固いと知ると、「パートナー企業が日本法人のジェネラルマネジャーを探しているから、それになったらどうだ」と言われました。
話を聞いたら、そちらのオファーは15万ドルプラス、ボーナスが売り上げの10パーセント。ヘッドハンターの誘いよりも高額でした。