【The UPDATE】徹底討論「音楽は稼げるのか」

2019/3/2
毎週火曜夜9時からTwitterで配信中の『The UPDATE』。今回のテーマは「音楽は稼げるのか」。箕輪厚介さんがレギュラーとしてスタジオに初登場。日本でiTunesやSpotifyを立ち上げた配信サービスの専門家、現役アーティストやレコード会社の取締役など、多彩なゲストを招いて議論しました。

番組を視聴するには、番組公式Twitterアカウント(@TheUPDATE_NP)をフォローしてください。火曜夜9時のライブ配信の開始をTwitterでお知らせします。
画像タップで番組本編が視聴できます(Twitterに遷移します)

世界と日本の音楽マーケット

世界ではCDなどのパッケージの売り上げが減少する一方、ストリーミング配信やダウンロードの売り上げは増加し、再成長が始まっています。
しかし、日本の音楽市場では、いまだにパッケージが強い傾向にあり、よくも悪くも特殊な状況にあります。
そこで、今回の『The UPDATE』は「音楽の届け方、作り方、稼ぎ方」の3つの視点から、議論を繰り広げました。
番組で繰り広げられた議論の中から、その一部をお届けします。

まずは「知ってもらう」

野本 稼ぐのはやはり難しい。サブスクリプション、つまり音楽のレンタルが伸びているということは、配信一回あたりの単価が少なくなる。
単純に、売るには人数が必要で、世界に進出していくしかないのでは。
古坂 ピコ太郎はどちらかといえば稼げたと思う。最初は自分で撮影もして、CMも入っていなかった。
とりあえずは広める、まずは知ってもらうということを考えて、知ってもらえさえすれば、ビジネスはどこへでも広がる。
箕輪 配信で大きく稼ごうとすると、ハイクオリティで世界に出ていかなければならない。その次元に、日本人が到達するのは難しい。
そこを目指すのではなくて、多くのファンをコミュニティ化して小さい経済圏を回していくほうがいいのかと。
今井 音楽を所有する歴史は長かった。日本にはCDを好きな人たちがまだ残っているし、アーティストと話しても、結局CDを作りたいという話になってしまう。
スタッフもアーティストもアップデートしていかなきゃいけないと思う。
 好きなアーティストの音楽を形として、CDを所有したいとは思うが、音楽を聴くには配信サービスを使う。
握手のためにCDを売りたくないとレーベルと話していて、自分の音楽をきちんと売りたいと思っている。

アーティストは稼げるか

箕輪 配信でアーティストはどれくらいもらえるのか。年収800万円を稼ぐには、そこそこ売れてないと無理では?
古坂 稼げるっていうのは、儲けから経費を差っ引いた額。僕は「ボキャブラ天国」で稼いだお金を機材に投資していた。
全部、自宅で録音して、ミックスからマスタリングまで、自分でやっていた。ノーボトムというバンドで活動していた時は、5年間は1円も入ってこなかった。
箕輪 これまでは、音楽を作るためにはハイリスク・ハイリターンのシステムしかなかった。これからは、ローリスク・ローリターンのシステムを音楽業界が作っていかないといけない。
今井 レコード会社もコンサートのチケットやアーティストグッズなどの質も良くなっている。
出発点は音楽だが、音源以外のビジネスを始めて、すべてを収益にする形に切り替えていく。
箕輪 ある意味、宗教化していくと思う。僕の楽曲にも「頭おかしい」と思えるようなフレーズがある。
歌唱技術は拙いけれど、みんな面白いと思うのではないか。音楽も本も、深く愛される存在にならないと。

観覧席に控えるもう1人の論客

佐々木 ここで、もう一人論客に聞いてみましょう。料理レシピ動画サービス「クラシル」の堀江裕介社長です。
料理動画も無料で出して、グッズ販売もする中で、音楽につながるところはありますか?
堀江 配信が進んで、アーティストが新しく認知されるのは難しくなったなと。何のアーティストの曲を聴いているかわからない。
感情移入もできなくなるし、映像、人間性をどこで表現するか考えなければならなくなってきた。
偶然、打ち合わせに来ていた堀江さんも観覧席から参戦した。
堀江 唯一マネタイズで変わっていないのは、生でライブをすることと、グッズを売るという部分。YouTubeで活躍している素人のライブチケット1.5万枚が、10分で完売する例もでてきている。
多くの人が無人島でライブをやっている中、渋谷の中心でライブをしている人が勝っている。
テレビの音楽番組など、間違ったところで演奏している。人が一番集まっているプラットフォーム上でどう人気をとるかを考えなければならない。

ユーザーのココロを獲る

箕輪 色々なSNSが出てきて、個人の時間がなくなる中で、まず心を獲らなければならない。一回心を獲れば、何でも売れる。
 自分たちの曲がホンジュラスで1位を取った。海外からのコメントも多い。
昔はメジャーデビューしたら自分たちを知ってもらえるというのがあったけれども、今は違う。自分たちでツイッターやインスタで発信する。
でも、自分たちのアカウントだと、自分たちのファンに向けてのものに限定されてしまう。自分たちの輪の外に出していく、自分達が発信したものを外に出すのは難しい。

コミュニティを埋める作業

野本 Spotifyでこのアーティストが売れていると判断する基準は、枚数ではなく、今はリスナーの数。ゆるやかなファンクラブを作って、口コミを増やす作業が必要になっている。
箕輪 マスに発信することができなくなっている。小さい集落をつくる、その中で異常なお祭りがあること、その音が少し周りに漏れてもう一つの集落に伝わるというイメージ。
円を頭の中に描いて、その円を埋めていく作業。それをせずにすべて営業でやってくれ、というのは無理。ピコ太郎も同じで、コミュニティを埋めていく作業なんだと思う。
古坂 最近「本当に作りたいのかな?」という音が多い。お笑いもそうで、今流行っているやつの裏にいかなければいけないのに。
「お前、恥ずかしくない?」と言えるレベルのものを自分たちが作らないといけない。認知を得ることに繋がるから。いいものはいいと作り手が思わないと。
箕輪 いいものを時流とは関係なくつくる。そのためには、コミュニティやパトロンが必要。ファンになっていく人は積み重ねて、その後、大ヒットさせる。
古坂 最終的にはクオリティに戻る。笑いも音楽も絵も古い時代のパトロン・システムに、結局戻るんじゃないかと思う。

自分の経済圏で熱狂を育む

 若い子から「音楽をしたいんですが、夢を選ぶべきか、就職すべきか」という相談も受けている。私が言うのは、アーティストはリターンが大きい職業だということ。
価値観とか、返ってくるものが普通の職業に比べて多い幸せな職業だと思う。オススメはできないけど、チャレンジですよね。
箕輪 今はチャンスの時代だと思っている。テクノロジーは整っている。自分の集落で狂った祭りをしておけばいい。グローバルでも勝負する。そのためには、熱狂がなければならない。自分の経済圏を見つけるということです。

古坂大魔王が選んだ今週の金言

およそ1時間の議論の最後は、番組MCの古坂大魔王が選ぶ「King of Comment」
古坂大魔王が選んだのは、今井さんの発言でした。
今井さんのこの発言は、どんな文脈で飛び出したのか、ぜひ本編をご覧ください。

次回は「子供とスマホ」

来週3月5日は「子供のスマホ利用」を徹底的に考えます。
学校へのスマホ持ち込みに賛成するのは、ライフイズテック取締役の讃井康智さん。
一方で、東大理Ⅲに4人の子供を合格させた佐藤亮子さんは「スマホは恋愛よりも厄介」と子供のスマホ利用に反対。
さらに、これまで多くの子供たちと向き合ってきた花まる学習会の高濱正伸さんも参戦し、子供のスマホ利用制限の是非を徹底議論します。
タップで観覧申し込みページに遷移します(アカデミア会員限定)
<執筆:木嵜綾奈、編集:安岡大輔、デザイン:斉藤我空>