【秘録】写真と化粧品をつなぐ、富士フイルムのすごいコラーゲン

2019/2/21
多くの種が絶滅に追いやられた中、人類を生き長らえさせてきた「最高の素材」がある。動物の毛皮だ。
トバ火山噴火による寒冷をしのぐために、人類は衣服を発明したという説もある。その素材となった毛皮や皮革は、柔軟性や保湿性に富み、丈夫で軽い。
数多くの代替材料が生まれた現代においても、革製品が支持され続ける秘密は、実はその主成分たる「コラーゲン」の性質にある。
コラーゲンと聞くと、化粧品などコスメ製品をイメージする読者も多いだろう。しかし、コラーゲンが肌や身体にいいのはどんなメカニズムに由来するものなのか、正しく理解している人はそう多くはないはずだ。
元はといえば、人間の身体に含まれるタンパク質の一種であり、人体のタンパク質の3分の1はコラーゲンだ。
(写真:Universal History Archive / Universal Images Group / GettyImages)
例えば骨もコラーゲンを重要成分としているから、弓矢などの武器としても活躍した素材ということになる。接着剤として使われた膠(にかわ)もまた、コラーゲンを水中で煮込んだゼラチンが主成分だ。
そして現代においては、意外や意外、あの「写真フィルム」もまた、原料の約半分はコラーゲンでできている。
デジタルカメラの登場によって写真フィルムが姿を消した今では、コラーゲンは再生医療や美容の領域へと活躍の場を広げている。それもそのはずで、コラーゲンは生体となじみがよいからだ。
さて、ここでピンとくる読者もいるかもしれない。そう、富士フイルムのことだ。
世界最大の写真フィルムメーカー、米コダック社が2012年に倒産したのとは対照的に、ライフサイエンスやヘルスケア分野へと見事に「業態転換」した化学メーカーとして、経営学のケーススタディにもなっているような大企業である。
実は、彼らが化粧品、医薬品、再生医療という新分野を次々と開拓していったのも、コラーゲンという素材技術を核にして捉え直すと、納得の景色が浮かび上がるのだ。
写真フィルムで培われた、富士フイルムのコラーゲン技術とはいかなるものなのか。それが分かれば、コラーゲンが見えてくる。
富士フイルム取締役でR&D統括本部長の柳原直人氏に、その真髄を聞いた。