この連載について
石の武器、鉄の鍬、紙や磁石などの記録媒体ーー。時代が求める優れた新素材の誕生は、文明を次のステージへ飛躍させてきた。そして今、自然界に類を見ない人工材料を開発する最先端では、いかなる新素材が生まれようとしているのか。未来を読み解くヒントとなる、新素材の世界へ誘おう。
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フィルムという主要事業が低迷しつつある恐怖に打ち勝ち、技術を棚卸しして鮮やかに業態転換してみせた手腕は実にお見事。要素技術を見直すだけならどこでもできますが、それを組み合わせて新事業を提案できる人がいたこと、さらにその新しい仕事を情熱を持って推進できる人がいたこと、なども素晴らしいと思います。
何年も前ですが、学会でFUJIの研究者から話を聞いたことがあります。曰く、FUJIFILMの取り組みは「倒木更新」であると。
倒木更新とは、倒れた古木を礎にして、新たな世代の木が育つ現象のことです。同社の足跡を見てみるとまさにその通り。
今後、バイオの世界でも、驚くような製品を出してくれることを期待しています。
(余談)
CMYの三層の感光層の写真が出てるので面白い話をひとつ。
これ、ベースとなるフィルムの上にCMYが順番に塗布されているのですが、Cを塗って乾かして次にYを塗って乾かして...なんてことはしていません。3層を液体のまま同時に塗布しています。そんなことしたら液体同士が混ざるのではと思われるかもしれませんが、流速と粘度を完璧にコントロールすると液体のまま3層を重ねる一発塗りが可能になるのです。(しかも実際は、機能層を含む20層もの同時多層塗り)さらに、当然ですが光が当たると感光してしまいますので、塗布作業は暗闇で行われます。(感光しない赤ライトを少し使うので、完全な暗闇ではないらしいですが)目隠ししてこの精密塗布、恐るべき技術です。
★こちらにCGによる説明があります。ページ真ん中くらい。
https://fujifilm.jp/business/cdmo/factory/magazine/03/
(余談Ⅱ)
Newspicksの中の人はご存知だと思いますが、トライセブン六本木ビルのお隣、東京ミッドタウン内にFUJIFILM SQUARE があります。写真そのものの歴史、FUJIのカメラ技術の変遷、最新のカメラにアスタリフト化粧品まで、色々展示されていて勉強になります。是非一度覗いてみてください。
たまに僕もいますよ。
「コラーゲンとは富士フィルムのDNA」
それほどまでに、深い歴史がある、フィルムとコラーゲン。
長年苦労されてきたことで蓄積されてきた知見は、事業を超えて通用するのですね。本当に高い技術があって、正しく経営判断でき、組織をマネジメントできれば、企業は死なない。そのようなことを感じた取材でした。
それほど変幻自在な材料であり、かつ生体にもなじみやすい。それがコラーゲンという素材です。
本日は、そんな「コラーゲン技術」というNewsPicks独自の切り口で、創業約80年となる富士フイルムの華麗なる業態転換、すなわち「写真フィルム」→「化粧品・再生医療」への一大シフト成功の秘密を読み解きます。
この記事で納得。とてもわかりやすいので、へぇー!っとなりました。
富士フイルムが写真を追求してきたなかで培ってきた先進技術が異業種で応用されている例と、コラーゲンという素材の力に注目です
基礎技術を持っていたとはいえ、主力事業を入れ替える決断と実行が簡単に進むはずがありません。
富士フイルムのヘルスケア事業の話題に触れるたびに、戸田さんをはじめとする、改革実行者のみなさんが成し遂げたことの大きさを感じるのでした。
https://r.nikkei.com/article/DGXMZO20507790Z20C17A8000000
「「コラーゲンを食べても肌がきれいになるわけではない」というのをどう説明するか。俺だったらつい「タンパク質はいったん分解されて吸収されるから云々」と言ってしまうのだが、某氏曰く「じゃハゲたおっさんが髪の毛食ったら髪が生えてくるか?」この説得力には負けた。」
https://twitter.com/KentaroSato/status/161487569417281536
ま、それはさておき。
8年くらい前、富士フイルムの方が研究開発戦略に関する講演の中で、アンゾフのマトリクスを、2×2じゃなくて3×3で使っている、という話をされていました。
既存と新規の間に、隣接、を考えているのだそうです。うわー、なるほど、と感じました。
「今あるものを使って新しいものを考えろ!」ではなくて、「今あるものの隣には何がある?」という問いの立て方をされているんだなあ、と。それって、適度に思考が刺激されそうで、いいな、と。
この辺も、フイルムの技術をヘルスケアに展開できた秘密なのかなと考えています。
なぜ富士フィルムが化粧品か、不思議だったけれど、これでクリアになりました。
富士フィルムの社員に安全で品質の高いものを世に出していくというDNAが染み付いている「わけ」も納得です。そういう背景があったとは。大切な思い出を豊かに記録するという使命。
このカルチャーもまた、肌に直接触れる化粧品づくりに生きている。
TACはセルロースという天然の高分子の加工技術によってつくられた化合物、TAC(tri acetyl cellulose:トリアセチルセルロース)。もともとは液晶ディスプレイのためではなく、写真フィルムの支持体(写真フィルムの基底となる透明で薄い膜)として製造されてきたという。
最大の特長は、光をまっすぐに運ぶ透明性と平滑性。そこに目を付けたのが、液晶パネルメーカーだったとのこと。
TACフィルムは一時期はやめてしまえ!という話もあったという。https://president.jp/articles/-/7835?page=2
コラーゲンは人間や動物の体にも含まれているが、記事にもある再生医療や化粧品(アスタリフト)に応用。また10年前に富山化学という製薬会社を買収しているが、コラーゲンもタンパク質の一種で、そこの知見を幅広く富士フイルムがもっていることも活用していこうという買収だった。
併せて、写真フィルムの需要は莫大だった。その莫大な需要を満たすために量産し、かつせっかく撮った写真がダメだったという悲劇を防ぐための品質担保も、記事にあるように極めて重要だった。井上さんが書かれている感光層の同時塗りや、乾燥工程、あとはフィルム延伸技術。フィルムはなくなったが、これらの技術はTACフィルムという液晶のキーのフィルム材料で用いられていて、世界トップシェア。
技術革新のスピードが年々増す現代において、一つのカテゴリで「100年」続く企業などあり得ません。
でも、同時にデジタル時代を見据えて写真事業を継続している富士フイルムの姿勢は素晴らしいものがあります。