【実録】孫正義が頼った「大ぼら経営者」永守重信の凄み

2019/2/12

20年先を読む男

それは、ちょうど1年前の正月のことだった。
京都市内にある日本電産本社で開かれた年初の役員会議の席、創業者の永守重信は、会議が始まるなり、こうまくしたてた。
「今年は何かが起こる。良からぬことが起きるから今から準備しておけ!」
当時は、日本電産のモーターは絶頂とも言えるタイミング。特に、自動車向けのモーターは「千客万来」とも言える好調ぶりで、幹部は誰もが成長モードがさらに加速する確信さえ覚えていた。
だが、永守の予感は確かに当たった。
昨年末、中国でのモーター受注が一気に落ち込み、今年1月には2018年度決算の下方修正を迫られることになったのだ。「永守の『予言』を聞いていたので、誰もうろたえなかったし、逆にきちんと対処が出来ている」と常務の宮地康弘は証言する。
「本人でさえ、何が起きるのかは分かっていなかったが、ただ当たるんです」(宮地)
この「未来予測」と、不可能を可能にする「実行力」こそが永守が、稀代の経営者と世界から注目を浴びる理由だ。
ソフトバンクの孫正義が国内で尊敬する数少ない経営者であり、実際に孫に請われて2014年から3年間、同社の社外取締役を務めた。経済誌が発表した「社長が選ぶベスト社長」でトップに選ばれたこともある。
また「買収の天才」としても知られ、各国で買収した約60社をすべて成功させている。
2030年に、現在の売上高を現在の7倍近い10兆円を目指すという日本電産の君主はいかに経営者としての道のりを歩んでいるのか。永守12の語録とともに改めて振り返る。