カタカナ英語は“値踏み”される。会話力を劇的に変える「3つのネイティブスキル」

2019/2/12
英語を何年勉強しても、なかなかビジネスで使えるレベルにまで達しないと悩むビジネスパーソンは多いのではないだろうか。実戦で使える英語を習得するためには何が必要なのか?

この悩みに応えてくれるのは、「English for Everyone」のトレーニングメソッドだ。2018年4月にサービスを開始した代表の是枝秀治氏は、総合商社で海外ビジネス経験を十数年重ねるも、英語で長く苦労した経験を持つ。

「ネイティブのスキルをインストールすれば、誰でも英語を話せて聞けるようになる」と、代表自身が試行錯誤を続け、合理的に導き出したトレーニング手法。即効性が高く、“目からウロコ”のメソッドとして、ビジネスパーソンの間で注目されている。

そんな独自のトレーニングをシニフィアン共同代表・朝倉祐介氏が体験。その後、ビジネスの世界でネイティブと対等に渡り合える英語力の重要性と、その英語を使っていかにしてグローバルで活躍していくかを語り合ってもらった。

日本人に足りない英語スキルとは

──15歳で単独オーストラリアに渡った朝倉さん。その後も外資系コンサルに勤務し、スタンフォード大学では客員研究員を務めるなど海外経験も多数お持ちですが、英語にはいまだ苦手意識があるとか?
朝倉 英語に対する苦手意識は主に発音ですね。かつてアメリカの友人に、「ユースケはappleすら、きちんと発音できていない!」と指摘されたことがあって(笑)。「appleのア(æ)はもっと喉の奥から出すんだよ」と。けっこうショックでした。
 僕の英語の土台は、受験英語で培ったもの。発音記号を一つひとつ覚えているわけではないので、どの単語をどういう風に発すればいいか、なんとなくでしか理解していません。現状の僕の英語は、資料などを使いつつ「いかにごまかしてしゃべるか」(笑)。
 スピーキングが苦手だからか、リスニングもあまり得意ではありません。海外ドラマや洋画は、難しい内容だと字幕がないと半分ぐらいしか理解できないこともあります。
是枝 海外でもご活躍された朝倉さんのベースにもなっているように、私たちが中学・高校と学んできた英語は、それなりにすばらしいものなんです。
 そこで培った文法や語彙の知識を使えば、分厚い英文契約書だって読めますし、少々複雑なこともEメールで書けます。
 しかし、スピーキングやリスニングといった、音声上のコミュニケーションとなると話は別です。
 日本語とは大きく異なる、英語の独自の「音」や「リズム」を使う必要があります。これらがないと、相手の言っていることを聞き取るのが難しくなり、話しても伝わらないことが多くなります。

18年学び続けても英語が身につかなかった

朝倉 たしかに、話す・聞くとなると、まったく違う素養が必要ですよね。僕も、テストとなると正直めちゃくちゃ得意です。TOEIC、TOEFLやGMATも受けましたが、ビジネススクールを受験するようなネイティブの方よりも高いスコアは取れます。
是枝 わかります。私も三井物産に入社し英語が必要になり、TOEIC500-600点台からスタートして、ひたすら勉強を重ねました。対面やオンラインなどあらゆる英会話学校に通い、市販の学習教材にも打ち込みました。その結果、TOEICは満点の990点、GMATもネイティブよりはるかに高水準に達することができました。
 そして、満を持して米・マサチューセッツ工科大学(MIT)に留学しましたが、それだけやったにもかかわらず、現地ではネイティブ同士の会話スピードについていけなかったのです。非常に驚きました。
 また、MITでは教室の一番前に座ってよく発言していたのですが、典型的なカタカナ英語の私の発言を、ほかの学生が通訳してくれることもありました。「今、彼が言っているのは、こういう内容だよ」と。
朝倉 ああ……、それは悔しい。
是枝 帰国後のビジネスの場面でも同じような感じでした。商談でヒートアップしてくると、英語が完全に日本語化してしまう。音はカタカナ、リズムはブツギレに。相手に通じないリスクをヘッジするために、いつの間にか、同じことを2度繰り返して言うクセまで付いてしまいました。
朝倉 ものすごく、わかります。

正しく意思疎通できないと損をする

是枝 20年近く掛けて、あらゆる英会話学校に通い、市販の学習教材に打ち込み、アメリカに留学までし、さらには仕事で英語をたくさん使って場数をこなしたのに、そのレベル止まり。不思議で仕方がありませんでした。
 世界中を駆け回っていましたが、振り返ると、カタカナ英語をしゃべる私は、きっと、相手方からは、かなり低く値踏みされていたんだと思います。
 逆の立場となって何度か私より英語のおぼつかない相手と商談をしたことがあります。その際には、相手が本当に理解できているか心配なので、「申し訳ないが、担当者を代えてもらえないか」と裏でお願いしたこともありました。きっと当時の私も同じように思われていたことでしょう。
朝倉 80年代、90年代の日本人であれば、カタカナ英語でも問題なかったんでしょうね。日本の投資銀行の黎明期にアジアトップのトレーダーとして活躍されていたような方たちって、実は英語自体はさほどうまくない。みなさん、ご自身でそうおっしゃいます。
 「でも、当時の日本には経済的なパワーがすごくあった。ボスが自分だから、下手な英語でも周囲が耳を傾けてくれた」のだと。
是枝 日本に対する興味が、高かった時代ですよね。
朝倉 今は悲しいことに、世界から日本への関心が低くなりつつある。相手からは興味を持たれていないことを前提に、対話の入り口としてネイティブにストレスのない語学力をこちらが備えておくことは重要なんでしょうね。
是枝 たしかに、すでに「この人から話を聞きたい」と思われるようなポジションを築いていれば話は別ですよね。どんな英語力でも、相手が必死に解読してくれますから。
 一方で、一般のビジネスパーソンが商談に飛び、互いに握手を交わして、開口一番「ハロー。ハウアーユー?」と日本語で挨拶したら……。相手の第一印象は、「この人で大丈夫だろうか?」と不安になる。信頼を得るまでに余分な時間が掛かってしまいます。
 日本でのビジネスの場面に当てはめてみるとわかると思います。初対面の相手が信用できるかどうかって、声の強弱や言葉の選び方などありったけの情報から読み取って、相手を探ろうとするじゃないですか。私たちも、一歩日本を出れば、英語で容赦なくそれをやられてしまいます。
朝倉 意思疎通に不安があると、なかなか距離が縮まらないんですよね。
 今後、技術が進んで自動翻訳機が使われるようになろうとも、ビジネスや交渉事の同じ土俵で対話し、本意を伝えるためには、やはり自分の言葉で話せることが必要だと思います。

ネイティブスキルをそのまま移植

是枝 朝倉さんには先ほど「English for Everyone」のトレーニングを体験していただきましたが、率直にどう思われました?
朝倉 英語だけに存在する音や、強弱を持たせた話し方を理屈で説明してもらい、これを繰り返し学んでいくとより話しやすくなるだろうという手応えがありました。
講師はすべてネイティブ。週に1度の対面マンツーマンレッスン(通学が難しい場合はskype受講も可)とオンラインレッスンを組み合わせて、学習内容を毎日身体に覚え込ませる
 アメリカに住んでいたときに、現地ローカルの英語トレーニングを受けたことがあるんです。俳優が役作りのために指導を受ける学校で、そこでも同じように発音やリズムに重きを置いていたことを思い出しました。
 ただ、その学校では先生が場当たり的に指摘してくるため、全体観は掴みづらかった。そういった点を合理的な方法で訓練してもらえるのはいいですね。
是枝 English for Everyoneのトレーニングは、日本語と英語の間に存在する言語的な違いを構造的に分解してスキルとして抽出、そのままみなさんにインストールするというものです。
 「ネイティブが話す方法とまったく同じ方法で英語を話せば、通じるし聞ける。そのために必要な英語スキルをそのまま移植してしまう」という考え方です。
 習得してもらうのは、「音」と「リズム」「英語思考」です。週1回のネイティブとの対面レッスンで、「æ」「f」「r」など、日本語にはない英語独自の音を、顔の筋肉や喉の使い方までトレーニングします。やっかいなことに、英語と日本語は発声の仕方まで異なりますので、英語用の発声方法まで学んでいただきます。
 同時に、日本語とは異なるルールを持つ英語のリズムを学びます。さらに、脳内の思考を直接英語化できるように、思考回路も訓練します。
そして、それらを単なる知識に留めず、身体が覚え込んで無意識に出せるようになるまで、毎日、ひたすら徹底した反復練習を行ってもらいます。
朝倉 語学学習はスポーツと同じですよね。
是枝 おっしゃる通りです。新しいスポーツを学ぶのと同じで、一つひとつの技術を地道に繰り返し練習しなくてはダメです。
  しかし、これまでの日本の英語学習のアプローチは「とにかくたくさん聞いて、たくさん話そう。そうすると、そのうち慣れてできるようになるはず」というものでした。
 この「英会話ばかりする」アプローチは、例えるならプロ野球の選手になりたいのに、技術の訓練を一切受けず、草野球ばかりに参加するようなものです。我流の悪いクセがつき、下手なままで一向に上達しません。
 私自身、20年近く、この「たくさん聞いて、たくさん話して」をやり切りました。ですが、聞けない・通じないままでした。同じ轍をみなさんに踏んでいただきたくない、という想いが強いのです。
 私たちは、野球で例えると、まずバットの握り方からスイングの仕方まで一緒になって徹底訓練します。「バットはこう握って、ここに力を入れます。振ってみてください。違います、脇が開いています。こうして。はいもう一回」という具合に、ネイティブスピーカーが逐一チェックして、正しいかたちを自分で無意識に再現できるようになるまで、繰り返し徹底的に練習します。
  実は私自身が、受講生第一号としてこのメソッドで訓練をしてみると、かなり早い段階で、はじめて英語のブレイクスルーが訪れたんです。
 ある日を境に、ネイティブ同士がしゃべっている会話が、意識せずに頭に入ってくるようになりました。CNNなんかを見ていても、あまりに自然に情報が入ってくるので、よく自分がいま何語でテレビを見ているのかがわからなくなるほどです。
 また特に意識しなくても、英語がいくらでも口をついて出てくるようになりましたし、もちろん、ネイティブと同じ方法で話しているので、聞き返されるようなこともありません。
 20年近く英語を学び続けて、はじめての経験です。しかし、これは私だけに起こったことではありません。弊社のウェブサイトには受講生の生の声を掲載していますが、受講生のみなさんが、日に日に、すごいスピードでネイティブ化していきます。
朝倉 それは勇気づけられますね。
 一つ気になったのは、レッスンの特徴として挙げられている「日本語にない音の習得」について。
 僕がかつてネイティブに指摘されたappleの「a」をはじめ、「work」の「r」など、発音を一つずつ新たに憶えていくと途方もない数がありませんか?
是枝 いいえ、実は新たに覚えることはそんなに多くないんです。じっくり反復練習する私たちのメソッドでも、1-2カ月ですべて網羅できます。
 しかも、一度、日本語にはない英語独自の音たちを網羅的に習得してしまえば、あとは、過去に聞いたことのある音たちが、一斉につながってきます。
 「æ」が使えるようになれば、「あれ? Amazon.comの最初のAもæなんじゃない?」みたいに。
 「この単語のこの文字はこの音で、あの単語のあの文字はあの音だな」という具合に、まるで点と点が結びつくように、過去に聞いていた英語の音たちが、すべて自分の財産となってよみがえってくる感覚です。

“英語が通じない日本人”神話は終わる

是枝 ところで朝倉さんは、海外でビジネスする際、言語以外に大事なことは何だとお考えですか?
朝倉 先に話したように、もう日本人であるだけで注目された時代ではありません。そのなかで世界に交ざっていくときに、どうすればこちらに興味を持ってもらえるかは考えます。
 例えば、日本の大企業の方たちがシリコンバレーにやって来て、「ちょっと話を聞きたいから、スタートアップを紹介してくれ」などと言われることがけっこうあります。でも、そんな理由で簡単に紹介できるわけない(苦笑)。ビジネスになりもしないのに、プロダクトづくりに日々熱中して過ごしている人たちの時間を奪うなんてこと、申し訳なくてできません。
 僕は起業家仲間と「Tokyo Founders Fund」というファンドをやっていますが、これは相手に興味を持ってもらう目的もあります。ファンドという出資スキームを自分たちが持っていると、スタートアップ側にも話すメリットがある。
 プライベートの場面だと、「寿司が握れるよ」「アメリカのおいしいラーメン屋を知ってるよ」かもしれないし、なにか相手に対する“お土産”が必要ですよね。
是枝 異文化の人たち相手にいかにして刺さっていくか、ですよね。
 私が海外でビジネスをする際に大事だと思っているのは、よく言われることですが、一歩日本を出たら、日本にいる時以上に自分の考えを発信しなくてはならないということです。
 文化のベースが変われば、黙っているだけで、さまざまなマイナスの印象を発してしまいます。英語ができれば、話すことに引け目がなくなります。まずこのスタート地点をきちんと作らないといけない。
朝倉 ネイティブと話していて、「君は英語がうまいね」と言われることからは本当にはやく脱したいですね。そもそも日本人は英語が下手という大前提があるからの言葉。悔しいし、腹が立ちます(笑)。
是枝 私は本気で、「“英語が通じない日本人”の神話」は終わると思っています。
 これまでは、ただ、学びのアプローチが間違っていただけ。本来、ネイティブがやっているのと同じ方法で英語を話せるようになればよい。そして、そのために必要なスキルを繰り返し練習して身に付ける。本当に、たったそれだけです。
 たいそうなお金も時間も必要ない。英語学習ってすごくシンプルで簡単なんです。
(取材・文:平山ゆりの 編集:樫本倫子 写真:北山宏一 デザイン:國弘朋佳)