アップル関係者が明かす「メイド・イン・USA」の修羅場

2019/2/1

ネジが足りない!

米中貿易戦争が激化し、以前からドナルド・トランプ大統領に「製造の場をアメリカ国内に移せ」と警告されているにもかかわらず、アップルが製造拠点を本格的に国内に移す気配はない。
その理由は、1本の小さなネジが説明してくれるだろう。
2012年にアップルのティム・クックCEOはゴールデンタイムのテレビ番組に出演し、アメリカ国内でMacを製造すると発表した。アップル製品としては久しぶりにアメリカ人の手で製造された、Mac Proの最上位モデルには、「Assembled in USA(米国内で組み立て)」という見慣れないフレーズが付くことになった。
ところが、いざ製造がテキサス州のオースティンで始まってみると、「ネジの確保」に苦労したと、このプロジェクトに携わった3人の人物は語る(秘密保持契約を理由に、3人とも匿名で取材に応じた)。
中国では、特別仕様のネジを短期間で大量に生産できる工場がアップルの製造ラインを支えてきた。テキサスでも、あらゆる大量生産に対応できるだろうと考えられていたが、ネジの供給体制は追いついていなかった。
テキサスでの製造は試作の段階から難航した。製造ラインにネジを供給していたのは、従業員20人の機械工場で、1日に1000本を納品するのが限界だったのだ。
このネジ不足が、新Mac Proの出荷が数カ月も遅れた理由のひとつだと先の関係者は語る。結局アップルは、量産体制を整えるにあたり、中国にネジを発注せざるを得なかった。