[ワシントン 28日 ロイター] - 米司法省は28日、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]と孟晩舟・副会長兼最高財務責任者(CFO)を、米国の対イラン制裁に違反する取引に関与した疑いで起訴した。米通信会社から企業秘密を盗んだ罪についても追及した。

ニューヨーク州の裁判所に提出した起訴状によると、ファーウェイがイランで事業を行うため、子会社であるファーウェイデバイスUSAと香港の通信機器販売会社スカイコム・テクとの関係について、ある大手銀行と米当局を欺いていた。

これとは別に、ワシントン州の裁判所に提起した案件では、米携帯大手TモバイルUS<TMUS.O>がスマートフォンの品質試験で使っていたロボット「タッピー」に関連する技術を盗んだ疑いに関し、企業秘密の窃盗、通信詐欺、司法妨害など10件の罪でファーウェイの子会社2社を起訴した。

ファーウェイは起訴についてコメントの求めに応じていない。

Tモバイルは、人間の指の動きを模倣するロボットであるタッピーについて、ファーウェイが技術を盗んだと過去に訴えていた。ファーウェイはこれまで、2017年に両社がこの問題を解決したとの見解を示している。

カナダ当局は昨年12月、米国の要請に応じて孟副会長を逮捕した。米当局は、米国のイラン制裁を回避する取引で孟氏が主導的役割を果たしたと主張している。

孟氏は不正を否定。逮捕後保釈が認められ、バンクーバーに滞在しており、今後、カナダの裁判所が米国への身柄引き渡しについて判断する。

米連邦捜査局(FBI)のレイ長官は起訴案件は「ファーウェイが米企業や金融機関を悪用するために取った恥知らずで執拗な行動を露呈している」と批判。

米国内の通信網で使われている同社製品についても、「外国政府が情報を故意に変更または窃盗し、検知されないままスパイ行為を実施し、圧力や影響力の行使を可能にすることになる」として懸念を示した。

ファーウェイと孟氏に対する起訴状では、スカイコムが米制裁に違反してイランに製品を販売しようとしたと伝えた2012、13年のロイターの報道に言及している。

起訴状は、この報道の中でファーウェイが内容を否定したことが、金融機関がファーウェイやその子会社との取引を継続するか判断する材料になったと指摘した。

また起訴状によると、FBIは2007年7月にファーウェイ創業者の任正非氏の聴き取りを実施。米当局者は任氏が米輸出法違反を偽って否定したとしている。

孟氏は2013年8月にある銀行の幹部と面会した。起訴状ではこの銀行を特定していないが、関係筋はHSBCホールディングス<HSBA.L>だとしている。同行は2012年に米制裁や資金洗浄関連法への違反で19億2000万ドルを支払った。

起訴状によると、孟氏は銀行幹部との会合で、イランでのファーウェイの事業やスカイコムの所有・経営権を巡り、事実と異なるプレゼンテーションを行ったという。

起訴状は、銀行側はファーウェイによるイラン制裁違反を認識していれば取引関係を見直していたはずだと指摘した。

HSBCが12月に発表した声明によると、米司法省は今回の件でHSBCが捜査対象になっていないことを確認している。