【橘玲・1万字】最もシンプルで確実な「最強のお金の増やし方」

2019/1/28
「投資」や「資産運用」と言うと、投資経験がない人にとっては、どう考え、どう行動すべきか分からないものだろう。

「新・お金の増やし方」特集の第1回目は、作家の橘玲氏が、投資・資産運用の「基本」を解説する。

橘玲氏は、『マネーロンダリング』や『タックスヘイヴン』などの経済小説だけでなく、ベストセラーとなった『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』や、『臆病者のための株入門』など、本格的な資産運用の本を数々執筆してきた。

ベストセラー作家に、長年かけて培った「最強のお金の増やし方」、そして、これから「自由で幸福な人生」を送るためのノウハウを聞いた。
橘 玲(たちばな・あきら)作家。1959年生まれ。早稲田大学卒業。編集者を経て、2002年『マネーロンダリング』(幻冬舎)でデビュー。2006年『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補となる。著書に『言ってはいけない 残酷すぎる真実』(新潮新書)、『上級国民/下級国民』(小学館新書)、『女と男 なぜわかりあえないのか』(文春新書)、『80's』(幻冬舎文庫)など。橘玲公式サイト:http://www.tachibana-akira.com

人的資本と金融資本を分けて考えよう

──20代、30代の若手ビジネスパーソンが資産運用を考える上で、最も大事なことは何でしょうか。
まず前提として、「自分がどんな資産=資本を持っているのか」を考える必要があります。
そのうえで私がいつも強調しているのは、「金融資本は分散投資し、人的資本は好きなことに一極集中する」という人生設計の基本です。
──人的資本とは何ですか。
人的資本の定義は、「生涯で得る収入の総額を現在価値に換算したもの」です。
現在価値の計算にはいろいろな考え方がありますが、日本では大卒の(男性)サラリーマンの生涯収入は3~4億円と言われており、給料が比較的高い会社では4億円を超えます。
日本に生まれた20代の若者なら誰でも1億円以上の人的資本を持っていることは間違いありません。
出所:NewsPicks編集部
「日本的雇用」と「グローバルスタンダードの働き方」はまったくちがうので、典型的な日本の会社で働く人を「サラリーマン」とし、グローバルな会社で働く人を「ビジネスパーソン」と区別します。
それに対して、社会人生活をスタートするときに100万円の預金があれば多い方でしょう。
──大卒で100万円の預金を持っている人は少なそうです。
仮に金融資本が100万円、人的資本が1億円だとすると、どちらの運用に力を入れるべきかは考えるまでもありません。
金融資本を年率20%で運用できても(いまのゼロ金利ではこれはものすごいパフォーマンスです)利益は20万円ですが、1億円を5%で運用したとしても(バーチャルな)収益は500万円なのですから。
それに加えて人的資本の大きな特徴は、金融資本の運用(投資)とちがって「働けば必ずお金が入ってくる」ことです。それに対して投資は、失敗すれば大きな損失を被ることがあります。
(iStock/NoLiMiT_Bkk)
人類の歴史を見るならば、欧米や日本のような先進国では、人はとてつもなく大きな人的資本を持って生まれてきます。だとしたら、その幸運を生かさない手はありません。
さらに、この人的資本はキャリアアップすることで大きくなっていきます。最初は1億円だった人的資本を、3億円や5億円にすることも不可能ではありません。