誰でも投資家になれる「投資3.0時代」が始まった

2019/1/28

500円でもポイントでもおつりでも

スマートフォンの普及で、投資や資産運用がもっと身近で手軽になろうとしている。
いま、投資初心者も資産づくりを始めやすい新サービスが次々と生まれている。
例えば、ポイントを使った運用サービスだ。
このサービスは、クレジットカードや各社サービスを利用した時に貯まるポイントを、特定の投資信託の価額に連動させ、証券口座をつくらずに「運用」することができる。
2016年12月にクレディセゾンが「永久不滅ポイント」を使ったポイント運用サービスをスタート。2018年5月にはNTTドコモが「dポイント」で、2018年10月には楽天が「楽天スーパーポイント」で同様のサービスを始めている。
筆者は、手元にあった楽天スーパーポイント・600ポイントを運用に回したところ、12ポイント増えた(撮影:谷口 健)
「おつり投資」というサービスも出ている。
まず、500円ごと、1000円ごとなどに金額を設定し、クレジットカードや電子マネーなどを使って買い物をする時、その設定金額の差額(おつり)を、自動的に投資に回すことができる。
スタートアップ企業のトラノテックやウェルスナビ、NTTドコモなどが提供している。
一方、メッセージアプリ運営のLINEは、同社の決済サービスのLINEペイと連携させて、最低500円から毎月積み立て投資ができる「ワンコイン積み立て」を2019年中に開始する予定だ。
アメリカに目を移すと、スマホで簡単に株式や投資信託などを売買できる「ロビンフッド(Robinhood)」や、おつり投資などを展開する「エイコーンズ(Acorns)」などのスタートアップ企業が急成長している。
アメリカでの動きと並行して、日本でもいま、スマホを舞台とした新たなネット証券の「あり方」を、各社が模索している。
アメリカで急成長する、スマホ向けのネット証券「ロビンフッド」(同社ホームページより)

異業種も参入し激戦に

FinTech分野を強化する通信大手も、投資の分野に触手を伸ばしている。
NTTドコモは、2018年5月からお金のデザインと組み、ポイント運用やおつり投資を展開している。
そして、1月24日に出てきたのが、KDDIがカブドットコム証券に最大1000億円規模の出資を検討しているというニュースだ。
KDDIは、ライフネット生命保険の筆頭株主で、三菱東京UFJ銀行との合弁でじぶん銀行を展開している。生命保険、銀行に続き、カブドットコム証券と組むことで、証券業界にも参入する見込みだ。
(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)
一方、ソフトバンクは、ネット証券のワンタップバイと連携を強化しており、ドコモとKDDIに続いて、ソフトバンクが証券業界でどういった動きを見せるか注目されている。
約20年前、今のSBI証券や楽天証券、マネックス証券など、ネット証券が次々と生まれた。
それ以前は、証券会社の営業職員が電話や店頭窓口で金融商品の売買の注文を受けていた。それが、ネット証券の登場でパソコンからも売買ができるようになった。
その20年前が「投資2.0時代」だとすると、今はスマホでより簡単に、誰でも投資ができる「投資3.0時代」に入ったと言えるだろう。
投資3.0時代という新時代を見据えて、通信事業者やIT企業、小売企業も交えて、群雄割拠の様相を呈しているのである。

橘玲「最強のお金の増やし方」

今回の「新・お金の増やし方」特集では、「投資3.0時代」において日本でどの企業が一歩先を行くのか、また、投資経験がない人が何を知っておくべきなのかについて、さまざまな角度でフォーカスしていく。
特集1本目は、作家の橘玲氏が登場する。
橘玲氏は、本格的な経済小説を手がける一方で、ベストセラーとなった『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』や、『臆病者のための株入門』など、数々の本格的な資産運用の本を執筆してきた。
そんなベストセラー作家が、長年かけて培った「最強のお金の増やし方」、そして、これから「自由で幸福な人生」を送るためのノウハウを解説する。

ポイント運用・ロボアドを徹底取材

今回の特集では、投資や資産運用の新サービスを徹底取材した。
投資経験のない人も手軽に始められるポイント運用については、クレディセゾンや楽天、NTTドコモに加えて、Tポイントを展開するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)がSBI証券と協業して参入する予定だ。
近年、ポイント経済圏を広げる各社が、投資の分野にも参入する中で、今後の競争を左右する鍵は何か、業界がどう変化しているのかを詳報する。
また、「ロボット・アドバイザー(ロボアド)」と呼ばれる「おまかせ投資」サービスについても深掘りする。
ロボアドは、「年齢」「余裕資金の有無」「値下がりリスクにどこまで耐えられるか」などの質問に答えるだけで、それぞれにあったポートフォリオ(資産配分)で投資をしてくれる。
ロボアドを展開するウェルスナビ、お金のデザイン(THEO)、FOLIOの3社のトップを直撃した。
スマホ向けの投資サービスが出る一方で、「お金のRIZAP」とも呼べる、お金の知識をつけるためのパーソナルトレーニングを展開するスタートアップ企業も現れている。bookee(ブーキー)だ。
3カ月で約30万円という高額なサービスだが、なぜ情報があふれているこの時代に、主に対面で行うサービスが出てきたのか。
NewsPicks編集部の川北真梨乃記者が体験し、その秘訣に迫る。

山崎元「投資で失敗しない鉄則」

当然のことながら、投資の世界に「絶対に儲かる」という話はない。
少し知識があるくらいの方が、騙されやすい。
そう警告するのは、長年ファンドマネジャーという投資のプロとして活躍した、経済評論家の山崎元氏である。
その山崎氏に個人が「投資で失敗しない鉄則」を聞いた。
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今回の特集は、情報の提供を目的としており、投資やその他の行動を勧誘する目的はない。
その一方で、いまの現役世代にとっては、公的年金の受給開始年齢がさらに延びる可能性もあるなど、「お金にまつわる不安」は消えることはない。
今回の特集がそうした思いに少しでも応えられれば幸いだ。
(執筆:谷口 健、バナーデザイン:國弘 朋佳)