【秘話】辞めマッキンゼー✕辞めアップルが挑む、すごい板金屋

2019/1/29
1月中旬。茨城県で板金加工を手がけて30年、日青工業の青木恵之専務は、とある起業家と対峙していた。
「このような会社が出てくるのを、ずっと待ち続けていました。他業界がテクノロジーで大きく変わっていくのを眺めながら、かたや板金屋の世界は、この何十年、やっていることが変わっていないからです」
青木専務はそう話す。
「キャディのような会社を待ち望んでいた」と日青工業の青木恵之専務(右)は話す(写真:池田光史)
青木専務が対峙していたその相手とは、起業家・加藤勇志郎。
2017年末に「キャディ」という会社を起こした加藤は東京大学卒業後、2014年に外資系コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーに入社し、2年でマネジャーに昇進したというきらびやかな経歴を持つ。
マッキンゼーで相手にしてきたのは、重工業や大型輸送機、建設機械、医療機器など大手製造業メーカーだ。その加藤がなぜ今、わざわざ起業してまで、町工場に足繁く通っているのか。
加藤勇志郎(かとう・ゆうしろう)キャディ代表取締役
東京大学卒業後、2014年にマッキンゼー・アンド・カンパニーに入社。16年に同社マネジャー就任。日本・中国・アメリカ・オランダなどグローバルで製造メーカーを多方面から支援するプロジェクトをリード。2017年11月にキャディを創業。(写真:池田光史)
それというのも、金属の“折り紙”とも言われる「板金」に、未来を感じたからに違いない。
製造業は180兆円規模の総生産額を誇る、日本の基幹産業です。そのうち120兆円程度が、実は部品調達のコスト。しかしその部品調達の分野では、100年以上も大きなイノベーションが起きていない
そして、その調達部品の中でも、とくに大きな比率を占めるのが、実はこの「板金」なのだ。

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例えば、車のボディーも板金の一つ。金属の「板」を切って、曲げて、くっつけて、塗る。これが板金であり、日本全体で実に4兆円もの市場規模を持つ。