人生が変わる「最新キャリア理論」5選

2019/1/21

働き方関連法で生じる“2つの差”

2019年、ビジネスパーソンを取り囲む世界は、波乱に富んだものになりそうだ。
4月からは、「50年に1度の労働法の大改正」とも言われる、「働き方改革関連法」が順次施行される。
目玉は、残業時間の上限規制(まずは大企業のみ)と、有給休暇5日付与の義務化(全企業)だ。
これにより、ビジネスパーソンに2つの変化が起きることが予想される。
1つは、大手勤務のビジネスパーソンを中心に自由時間が増えるということだ。
ということは、この余暇の過ごし方で、ビジネスパーソンの学びや成長に大きく差がつくと推察される。
この時間をただ消費してしまう人、自分や仲間への投資に充てる人──。結果の違いは疑うべくもない。
(写真:AntonioGuillem/iStock)
2つ目は、働く時間の長さで忠誠心や熱意を見せつけるといった「昭和・平成的価値観」が通用しなくなる、ということだ。
これまで以上に生産性を高め、成果を出し、職責をまっとうすることが求められるのではないか。
一方、世界に目を向けると、米中を中心とした国家ぐるみのテクノロジー競争に代表されるように、技術の革新は日進月歩で進化を遂げている。
実際、ここ数年で、自分で映画を作ったり、アイデアを広げたり、コミュニティを作るなど個の力や仲間との協業でムーブメントを起こす人は世界中で増えている。
(写真:Rawpixel/iStock)
これからの世界を席巻する「新しい力」を示したベストセラー『NEW POWER』の著者の1人、ジェレミー・ハイマンズ氏(特集2回目に登場)は、「人々は、世の中に参加したい、社会に貢献したいという欲求や期待を高めている」という。
誰もがSNSなどを介し、仲間を見つけられ、ムーブメントに参加できる時代だ。
顧客は、企業から一方的にモノを押し付けられ、ただ消費するだけの行動に飽きている。
組織で働く人も、少数の人間だけが権力を掌握し、強力な後ろ盾がないと重要な仕事は出来ないという閉塞感に辟易としている。
「人は、自分は阻害されている、仲間と繋がっていない、と感じられる時に、その組織に対して牙を剥く。人は自分が組織や社会から“無関心の対象”となっていることが、何より辛いのです」(ハイマンズ氏)
こうした人々の行動や期待の変化に敏感に気づき、ロイヤルティーの高い消費者を仲間として認め、商品開発プロセスに巻き込むなど“参加プレミアム”を付与し、「ニューパワー」を発揮する企業や組織、個人は、意図した以上の効果を生み出しているという。
デンマークのレゴ社は、70年以上の歴史を持つ老舗企業ながら“ニューパワー”を生かし、業績回復した企業の1つだ(詳しくは特集2回目で紹介)。(写真:ロイター/アフロ)

2つの“ニューパワー”

本特集では、2つの意味で、読者の皆様に「ニューパワー」を手に入れるサポートをしてゆきたい。
1つ目は、前述した、少数のエリートが権力を握る「リーダー主導型」ではなく、多くの人が生み出す「仲間(ピア)主導型」の「ニューパワー」の身につけ方を、『NEW POWER』の著者2人が徹底的に指南する、というもの(特集2回目)。
2つ目は、読者の皆様がより楽しく生き生きと働くために、一人一人違う自分仕様の「ニューパワー」を手に入れるためのヒントとなる理論や事例を紹介する、という意味合いだ。
具体的なラインナップは以下の通りだ。
この予告編と同時に配信する特集1回目は「自分を知る『リフレクション講座』実況中継」をお届けする。
リフレクションとは、人材育成の現場、そして教育の現場で最も注目されている概念の1つで、現在の自分を「振り返る」という意味だ。
「リフレクション理論」の第一人者で、21世紀学び研究所所長の熊平美香氏は、ビジネスパーソンが自己成長する上で、リフレクションは欠かせないという。
なぜなら、学びや成長の目的は、「現状(の自分)」と「ビジョン(ありたい姿)」とのギャップを埋めることだからだ。
そこでNewsPicks編集部は、2人の記者が自ら熊平氏による「リフレクション講座」を受講、その実況中継を展開する。自分を理解するために大きな助けになること請け合いの保存版だ。
【図解・保存版】自分を知る「リフレクション講座」実況中継

『NEW POWER』著者を独占取材

特集2回目は、前掲書の『NEW POWER』の著者、ジェレミー・ハイマンズ氏とヘンリー・ティムズ氏のロングインタビューを豊富な図解と共に、展開してゆく。
前述のように、テクノロジーの進展と人々の意識や期待の変化により、少数の権力者がパワーと情報を握るトップダウン型の組織やムーブメントは時代遅れになりつつある。
それに代わって求められるのが、情報を開放し、人々の参加意欲を高め、規範を示す「ニューパワー」人材だ。
デンマークのレゴ社やアリゾナの自動車会社「ローカルモーターズ」など豊富な事例から、個人がニューパワーを発揮するための具体的なステップを指南する。
【直撃】「ニューパワー」時代が到来、人を熱狂させる3つの法則
特集3回目には、実例編として、リンクトインの日本法人の代表、村上臣氏が登場する。ヤフーのCMO(チーフモバイルオフィサー)を辞め、リンクトインに転じた時、周囲は「40歳での異業種・異職種」への挑戦に驚いたという。
なぜ、村上氏はプロティアン・キャリアの道を選んだのか? 「自分という商店の“お品書き”を増やすと、人生が楽しくなる」など数々の名言が飛び出す、ロングインタビューだ。
【リンクトイン 日本代表】自分商店の「お品書き」を増やそう
4話目は、ボストン大学教授のダグラス・ホールが唱え、今、再び脚光を浴びる、「プロティアン・キャリア理論」について、法政大学キャリアデザイン学部の田中研之輔教授が解説する。
プロティアンとは変幻自在という意味で、ギリシャ神話に登場する「あらゆる物に姿を変えることができる」海の神プロテウスが語源だ。
田中教授によると、これまでの「キャリア論」は、基本的に、特定の組織の中でどうキャリアを作っていくかを中心に語られてきた。
だが「プロティアン・キャリア理論」の基本思想は、キャリアは組織よりもむしろ個人によって作り出され、個人や自分のキャリアを作るには、頻繁な変化と自己発見を繰り返すことが重要だという考え方だ。
キャリアに成否などなく、成功の基準は自らの「心理的成功感」だと定義する。つまり、出世や評価、昇進など、自分ではコントロールしにくい外的要素に依拠しない。その神髄と「プロティアン・キャリア」を実践するためのヒントを、豊富な図解と共に展開してゆく。
【図解講義】あなたの“不満”こそ、次なるキャリアの道しるべだ
5回目は、21世紀型イノベーター「STEAM人材」に近づく方法について、シリコンバレーで教育・人材育成の最前線に立って活躍するヤング吉原麻里子、木島里江の両氏に、STEAM人材としての資質を体得するための極意を聞いた。
【新常識】シリコンバレーが求める「STEAM人材」とは何か
イノベーションを起こす人材の共通点として、今シリコンバレーで注目されているのが「STEAM」という概念だ。
従来の「STEM(サイエンス・テクノロジー・エンジニアリング・数学)」に加えて、今後必須となっていくのが、人間性を大切にする「アート」の感性と「新しいヒューマニズムの思想」だ。果たして、その中身とは?
6回目は、発売されたばかりにもかかわらずいきなりベストセラーになっている『天才を殺す凡人』の著者でワンキャリア執行役員の北野唯我氏の「才能を活かす人(もの)、殺す人(もの)」講座を図解で解説する。
自分の才能に気づき、それを開花させる実践的な内容だ。
【図解・保存版】あなたの中に眠る、“天才”を開花させる方法
特集の最後、7回目には、劇的にキャリアを変えた実例として、芸人・ヒロシの90分にわたるインタビューを掲載する。
【独占】芸人・ヒロシがYouTuberになって手に入れた“ニューパワー”
「ヒロシです。」で始まる自虐ネタで大ブレークしたものの、バラエティ番組になじめず、テレビの世界からドロップアウト。
そんなヒロシが、YouTuberになって再ブレイクした理由と、手に入れた“ニューパワー”とは?
「個で発信し、決定権を自らの手に握ることで、働き方は変わる」──。不器用な男が紆余曲折の末にたどりついた「ストレスフリーな仕事論」とは?
(執筆:佐藤留美、藤田美菜子、デザイン:星野美緒)