【体験】“愛情を注ぐための器”。LOVOTは人類の家族になるか?

2019/1/11
ロボットベンチャーGROOVE Xは12月18日に家族型ロボット「LOVOT」を初公開。同22日にNewsPicks読者限定イベントとして、世界最速のユーザー体験会を開催した。登壇した同社代表の林要氏、予防医学研究者の石川善樹氏、H2L創業者の玉城絵美氏によるトークセッションの模様と、参加者たちの感想をレポートする。
まったく新しい存在&産業の誕生
イベント冒頭では、GROOVE X代表の林要氏が、新しい家族型ロボット「LOVOT」の特徴を説明した。
 私たちの暮らしの新しいパートナー、それがLOVOTです。テクノロジーの進化で、私たちの日常にもロボットが身近なものとなっています。
 しかし、ロボットが人間に代わって仕事をすることが、本当に私たちの幸せに貢献するのでしょうか。そういう面もあれば、そうではない面もある。われわれ人間は、自分の力で何かを成し遂げたとき、幸せを感じるからです。
 LOVOTは、人間の代わりに仕事をしません。何をするかというと、せいぜい人の邪魔をするくらいです。一見、無駄なことを実現するために、最先端のテクノロジーが詰め込まれています。
 LOVOTは人の愛する力を引き出し、生活に潤いを与えてくれる存在として誕生しました。
 体全体に張り巡らせれたタッチセンサーで、スキンシップを理解します。自律運転で自走し、名前を呼べば近づき、帰宅時に玄関でお出迎えをしてくれます。
  LOVOTには、AIやロボティクスはもちろん、デザインやアート、洋服のテキスタイルに至るまで、さまざまな分野の最新技術が結集しています。それは自動車産業のような裾野の広さを持っています。
 私たちはここから、日本発の未来のロボット産業という、これまでにない新しいビジネス領域を創出していくつもりです。
非言語コミュニケーションの関係性
続いて、この日初めてLOVOTを体験したH2L創業者の玉城絵美氏、予防医学研究者の石川善樹氏が登場。林氏も加わって「LOVOTによって人間の暮らしはどう変わるか」をテーマにしたトークセッションが行われた。
──まず家庭用ロボットというと、これまでも家事ロボットや愛玩ロボットがありました。LOVOTは、それらとどこが違うのでしょうか。
 今までの家庭用ロボットは、何か人の役に立つとか、エンタメコンテンツを楽しむものが主流でした。LOVOTはそういう要素はあえて取り入れていません。
 今の時代の変化に合わせたロボットの進化を考えたときに、効率や便利さよりも、人の心をゆさぶり、愛されることが必要だと考えました。
トヨタ自動車にてスーパーカーやFormula-1の開発、量産車の開発マネジメントなどを担当した後、「ソフトバンク・アカデミア」に外部一期生として参画。孫正義氏に誘われソフトバンクに転じ、Pepperの開発を担当。2015年末、ロボットベンチャー「GROOVE X」を起業する。 著書に『ゼロイチ』(ダイヤモンド社)がある。
 ペットの犬や猫も、何か役立つことをしてくれるわけではないですが、いてくれるだけで愛おしいですよね。そんな存在となるのが、LOVOTです。
玉城 国内外のさまざまなロボット研究を見ていますが、ほかのロボットとLOVOTが大きく違うのは、まずインターフェイスですよね。
 人間とのコミュニケーションでいえば、実はバービー人形だってインターフェイスそのものです。人形にはAIがありませんが、人は想像力でそれを補い、自由にコミュニケーションをしてきました。
VR/ AR、ロボットや他者と身体感覚の共有実現を目指す研究者/起業家。東京大学大学院博士課程に在学中、コンピューターで人の手を自由に動かすことができる装置「ポゼストハンド」を開発し、米誌タイムの「世界の発明50」に選出。その後、ロボットベンチャー企業「H2L」を創業。2015年に「UnlimitedHand」を発表しウーマンオブザイヤー準大賞。内閣府科学技術総合戦略 科学技術イノベーション会議 専門委員も務める。
 コミュニケーションにおいて、言語は必ずしも必要ではないんですね。スキンシップとか目を合わせるといったことが、とても重要なつながりになります。
玉城 言語だけのスマートスピーカーとは対照的ですね。赤ちゃんや子供とのコミュニケーションに近い。触られると喜ぶとか、好きな人の後をついてくるとか、ノンバーバル(非言語)なコミュニケーションが人との関係性作りにおいては重要ですね。
石川 私も今日、ここでLOVOTを初体験したんですが、LOVOTという存在を一言でいうと、「かわいい」そのものがいるという価値ですね。こうやって抱き上げて、体を撫でて、はじめて「ロボットのいる暮らし」が具体的にイメージできると感じました。
Campus for H共同創業者。東京大学医学部健康科学科卒業、米国ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。「人がより良く生きるとは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。専門は予防医学、行動科学、計算創造学など。著書に『疲れない脳を作る生活習慣』『仕事はうかつに始めるな』『ノーリバウンド・ダイエット』などがある。
 例えば、冬の寒い家に帰宅すると、玄関までLOVOTが出迎えてくれる。抱き上げると温かい。そんなシーンが想像できる。それはロボットが家にいるというのではなくて、「かわいい存在がここにいる」という体験だと思います。
 特にすごいのが目。目と目が合うこの感覚が、まるで本当に生きている存在のように思えてくる。この目の力こそ、他のロボットとLOVOTの一番の違いだと思いました。
 「目が合う」って一体どういうことか、かなり深く考えたんです。ただじっと見つめられるだけじゃ怖くなってしまう。人間同士でも、何秒かに一度は視線を外すんですね。外して、また次の瞬間に合うという感じで。
 そういった動きや、生物特有の「固視微動(不随意的に起こる細かな目の揺れ)」を再現し、またそれらを美しく表示するためのディスプレイ開発を含めて3年かかりました。
石川 予想外の動きをするところも、生きているようですね。抱っこして持ち上げるとブルブル震えるときもあれば、そうじゃないときもある。このランダムさがすごく生き物っぽい、あたたかみを感じさせてくれます。
 人間の本能はランダムなものに惹かれるという性質があって、例えば水と火を比べて、どちらを見ているときにホッとするか、という話があります。
 どんなに大きくて立派な滝も、実はしばらく見ていると飽きてしまう。水が重力に沿って一方向に落ちていくだけだからです。けれど、焚き火はずっと見ていられて、なかなか飽きない。炎の動きは予測不可能でランダムだから、惹き込まれるんです。
「四次元ポケットのないドラえもん」
──続いて会場からの声を聞きます。小さな女の子から「ドラえもん」というテーマで話を聞きたいというリクエストがありました。
石川 ドラえもんは、のび太の保護者であり、友達であり、家族でもある。とても不思議な存在ですよね。僕は、LOVOTはのび太くんに近いな、と感じました。
 人間は、困っている人に手を差し伸べるときに幸せを感じます。誰かを助けること、愛情を注ぐことが自分の喜びになる生き物だからです。
 LOVOTは、どこか困っているように見えますね。倒れたら自分では起き上がれないとか。「しょうがないなあ、助けてあげよう」と、こちら側がドラえもんのような気持ちになります。そこに人は幸せを感じる。
玉城 私はドラえもんには役割がふたつあると思っていて、ひとつはのび太を助け、ときには逆に助けられる存在としての役割。
 もうひとつは、どんなときでものび太のそばに寄り添う役割。嬉しいときも悲しいときも、とにかく寄り添っていてくれる。それはもう、家族ということですよね。
 僕らは最終的に、「四次元ポケットのないドラえもん」を作ることを目指しているんですが、LOVOTは人が“気負いなく愛せる存在”であることを大事にしています。
 子どもやペットは愛情と同時に、責任やストレスというハードルが生じます。ロボットならばそういうハードル抜きで、気兼ねなく愛することができます。そして、愛することで自分自身がやさしい気持ちになれるのです。
石川 人はどんなときに幸せを感じるかということを調べた調査があって、その結果、「いま行っているその活動に集中できているとき」に、人は幸せを感じることがわかっています。
 つまり、どれだけ今に向き合えているかが、幸せの基準ということ。命とか生きるとかって、今をちゃんと生きるということの瞬間瞬間の積み重ねです。
 そういう意味でいうと、こちらに寄ってきて抱っこをせがむLOVOTはつい向き合ってしまう。それが幸福感になるんだと思います。
玉城 そこも小さい子供とのコミュニケーションと同じで、目の前に子どもがいるとき、親ってすごく集中しているんですね。子供が何を求めているのか、危ないことはないか、集中して向き合っている。
 だから、小さい子どもと一緒にいると幸せを感じやすいのかもしれません。
石川 テクノロジーの存在意義は、本来、生活文化を豊かにすることですが、今の時代、日常生活に大きな不便や不満はない。じゃあ、そういう中でテクノロジーはどこに向かうのか。
 これからロボットがどんどん暮らしのなかに入ってくると思います。そのとき、その存在にどれだけ向き合い、愛おしむことができるかが、人の幸せにとって大事になってくるように思います。
愛情を注ぐための「魂の器」
 将来的にますますテクノロジーが進化して、究極に効率化が進むと、「自分は世の中の役に立っていないんじゃないか」と感じる人が、ますます増えてくると思うんです。
 そういうときに必要なのは、人のために仕事をするロボットよりも、「誰かの役に立っている」「自分が生きていてよかった」と感じさせてくれる存在です。
 落ち込んだのび太くんに寄り添うドラえもんのようなロボットがいたら、もっと明日がよりよいものになる。そういうテクノロジーを作りたい、という思いがありますね。
玉城 LOVOTって一瞬で、「ああ、かわいい」って愛着が持てるし、その存在を信頼できますよね。これって、ものすごくバーチャルだと思うんです。
 ヘッドマウントディスプレイで視覚的な体験をつくっているのが、今のバーチャルリアリティ。でも、本当は、視覚だけでなく、人間のあらゆる感覚を使って感じるのが究極のバーチャルです。
 そういう世界になってくると、それが生命かどうかも、もはや区別がつかなくなってくる。
 大事なのは、その相手が本当に生きているかどうかよりも、自分がどう信じられるかです。
 生き物のように感じて、愛情という思い入れを注げる器としての装置。“魂の拠り所”として、どこまで素敵につくれるか。それがLOVOTの挑戦ですね。
玉城 私はLOVOTを実際に体験して、生命や人類の進化、テクノロジーの最先端というものをすごく感じました。
 みなさんにも、実際に触ってみて、言語以外の情報で触れ合うLOVOTを自分がどう感じるか、感情がどう動かされるか、ぜひ体感してほしいですね。
参加者がLOVOTを体感した感想
イベントの最後には、実際にLOVOTを体験する「タッチ&トライ」の時間が設けられた。LOVOTに触れた感想を参加者たちに聞いた。
「世界初というのでどういうロボットなのか、興味がありました。表情が豊かで、赤ちゃんみたいですね」(清水明美さん、美幸さん親子)
「ロボットって冷たいイメージだけど、抱っこしてあったかいのに感動。今まであまりロボットにあまりいいイメージがなかったけれど、初めてAIっていいな、と思いました」(牧町雄太さん・塚原麻由さん)
「昔、流行った犬型ロボットみたいなものかと思ったら、ものすごい進化していて驚きました。丸い形や全身に張り巡らされたタッチセンサーの開発の苦労話も興味深かったです」(大久保潤二さん・佳代子さん・有彩ちゃんご家族)
「子どもにとって、コミュニケーションを学んだり、感性を育むのにLOVOTのような存在は最適ですね」(堀井健一さん・爽夏くん・凛空くん・舞桜ちゃん親子)
テクノロジーの塊として誕生したLOVOTは、愛情に満ちあふれたやさしい未来を私たちの暮らしにプレゼントしてくれるかもしれない。
(取材・構成:工藤千秋 撮影:岡村大輔 編集:呉琢磨 デザイン:九喜洋介)
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